第39章 【いざ魔法省へ】
魔法省に着いた瞬間から、クリスは異様な雰囲気を感じ取った。まず人気がなさすぎる。
いくらお役所と言えど、この時間はまだ人がいるはずだ。それなのに誰一人として姿が見えない。
嫌な予感がクリスの全身を駆け巡った。
「ハリー!どこにいるんだ!?ロン、ハーマイオニー、シリウス!!」
安否を確認しようと、クリスはとにかく大声を張り上げた。広い中央広間にクリスの声が不気味なほど反響した。
どうしてこんなに静かなんだ?まさかもう――!?
不安に胸が押しつぶされそうになったその時、背後から驚く声が返ってきた。
「クリス!?こんなところで何をやっているんだ!?」
「シ……シリウス!?」
それは捕まっているはずのシリウスだった。他にもルーピン先生やムーディ先生、それにキングズリーとトンクスもいる。
クリスはキツネにつままれたような気分だった。クリスが目を白黒させていると、シリウスが近寄って来て両肩に手をのせた。
「クリス、無事だな?ハリー達はどこだ?」
「多分、先に神秘部に……と言うか、シリウスこそ無事なのか?ヴォルデモートに捕まったんじゃ……」
「それはヴォルデモートの罠だ。ハリーに予言を取らせるためのな」
「シリウス、それ以上はっ!」
ルーピン先生が厳しい声で制したが、シリウスは気にも留めていなかった。
クリスは何が何だか分からなかった。ただ、ヴォルデモートの罠ということは、ハリー達が危機にさらされているという事だけは分かった。
「シリウス、儂は先に神秘部に向かうぞ。キングズリー、トンクス、ついて来い」
ムーディー先生は義足とは思えないほど素早く先陣を切って行った。キングズリーとトンクスもそれに続く。
残ったルーピン先生はいつもの優しい笑顔ではなく、深刻な顔でクリスとシリウスを見ていた。
「シリウス、早くクリスを安全なところに。私たちも急ごう」
「クリス、先にホグワーツに戻っているんだ。いいな?」
「嫌だ!」
反射的にクリスは返事をした。自分でもわかっている。まだまだ未熟な15歳の、それも魔法も使えない自分が行ったって足を引っ張るだけだって。
しかし、だからと言って自分だけ何もしないで待つなんて事は出来なかった。