第4章 【大人げない大人】
大人たちがこんな風に声を荒げるところを見た事がないクリス達は、いつ口をはさんで良いのやら見当もつかず、黙ってやりとりを見守るしかなかった。
トンクスはこの言い争いに迫力負けしてイスごとテーブルから遠のいていたし、マンダンガスはマンダンガスで、ただ1人酒の飲み過ぎで幸せそうにイビキをかいて寝ていた。
ルーピン先生が普段の温厚な顔ではなく、真剣な表情でハリーの方を向いた。
「ハリー、後は君が決めるんだ。君はもう自分で判断できる年齢だ」
「僕……僕、ちゃんと聞きたい。いったい何が起こっているのか。もう馬鹿みたいに新聞をゴミ箱から漁るのはまっぴらだ」
「分かった」
「――ちょっと待った」
まるで自分の怒りを抑えるかの様に、シッカリと腕を組んでいたシリウスが口をはさんだ。皆の目が再びシリウスに注がれた。
「ハリーが知るのなら、クリスにだって知る権利がある。彼女もヴォルデモート復活の場に居合わせていたんだ」
その瞬間、バンッ!と大きな音が部屋に響いた。ウィーズリーおばさんが真っ赤な顔をして、全身全霊の力を込めてテーブルを叩いたのだ。
おばさんはワナワナと唇を震わせ、目を見開いている。
「あなた……よりによって貴方がそれを言うの?この屋敷で、誰よりもクリスの近くに居た貴方が――」
「そうだ『私だから』言うんだ」
「何てことっ!!貴方っ、クリスが父親の件でどれ程傷ついているか知らないわけじゃないでしょう!?部屋に籠って、何日も食事も出来ず、こんなにやつれて!貴方はクリスが可哀想だとは思わないの!?」
「現実から逃げていたって何も始まらない。良い機会だ、クリスも知るべき事は知っておいた方が良い。勿論強制はしない。クリス、君が決めるんだ」
突然渦中に引きずり込まれ、内心クリスは戸惑った。
確かに今までは現実から目を逸らし、不死鳥の騎士団が何をしているのかなんて考えた事も無かった。
だがハリーと同じくヴォルデモート復活の場に居ながら、そしてヴォルデモートの実の娘として、知らぬ存ぜぬで全てをやり通すのは少し卑怯だと思った。
「……私も、ハリーが知るのなら、知る義務があると思う」
――そう『権利』ではなく、これは『義務』だ。自分は責任を負う『義務』がある。