第4章 【大人げない大人】
クリスが小さくそう呟くと、ウィーズリーおばさんが両手に顔を埋め小さく悲鳴を上げた。
おばさんが自分の為にここまで心を砕いてくれていると思うと少し心苦しくて、クリスは胃がねじれるような気分がした。
十分間を置いてから、ウィーズリーおばさんが顔を上げた。
「そう、分かったわ。フレッド、ジョージ、ロン、ハーマイオニー、ジニー。みんな部屋へ戻りなさい」
「なんでだよ!!」
「僕達はもう大人だ!」
「ハリーとクリスだけ良くて僕達は駄目なの!?」
フレッドとジョージ、ロンが立て続けに叫んだ。
「2人は特別です!あなた達はまだ若すぎま――」
「俺達はハリー達より2つも年上だ!」
「もう17歳だ!成人してる!!」
「良いから言う事を聞きな――」
「モリー、フレッドとジョージはここに残る権利がある。2人とももう大人だ」
ウィーズリーおじさんがそう言うと、おばさんは何か言いたそうに大きく息を吸い込んだ。だが言葉にならず、ギュッと目をつぶると、諦めた様にため息を吐いた。
「分かりました。フレッドとジョージは残ってよろしい。けど――」
「隠したって、ハリー達に教えるかぎり、僕とハーマイオニーには全部筒抜けだ」
ロンがムキになって言った。確かに2人に聞かれたら答えないわけにはいかないだろう。それにフレッドとジョージが秘密を守れるわけがない。
ロンはハーマイオニーと一緒になってハリーの目を見つめた。
「ね?そうでしょうハリー」
「もちろんだよ」
「そう!分かったわッ!!来なさいジニー、部屋に戻るのよ!!」
「嫌っ、私も聞きたい!!」
「も・ど・り・な・さ・い!!」
一言一句に怒りを込めておばさんが叫ぶと、ジニーの腕をつかみ無理矢理引っ張って厨房から出て行った。
ジニーはあらん限りの罵詈雑言を口にし、暴れていたが、その音もだんだん小さくなっていった。
「それでは、話しをしよう」
話しを遮る者が居なくなると、シリウスの灰色の瞳がハリーとクリスを捕らえた。
ハリーの誕生日だと言うのに、和やかな雰囲気は遠くの彼方へ消え去り、クリスの心の中には暗雲が立ち込めていた。