第37章 【真の悪夢】
フクロウ試験――通称『O・W・L』。ホグワーツ魔法学校で15歳になった生徒が受ける公式テストであり、5年生の6月に2週間にわたって行われる。
将来の仕事に影響する重要な試験で『O・W・L』で一定の成績を修めた生徒だけが6年生からの『N・E・W・T』レベルの授業に進む事ができる。
つまり、このテストで将来の大半が決まるのだ。
5年生は全員この1年間、今までにないほど勉強してきたし、また、させられてきた。
クリスも例にもれず、勉強してきたつもりだ。
魔力を失い、病院に通いながら秘密の会合を開いて特訓までした。
しかし、何がいけないのか分からないが魔力は戻らなかった。
試験の前夜、クリスは早めにベッドに入った。
あと数時間で、テストが始まると思うと、なんだか変な気分がした。
しかしジタバタしても仕方がない。実技が駄目なら筆記だ。筆記が駄目なら――。
「君の所にお世話になろうか。なあ、どう思う?」
クリスマスにシリウスから貰った巨大な黒い犬のぬいぐるみを抱きながら、クリスは眠りについた。
翌朝から、朝食の席にはピリピリと緊張感が漂っていた。
この後5年生には普通魔法レベル試験の『O・W・L』が、7年生にはめちゃめちゃ疲れる魔法テスト『N・E・W・T』が待っている。
大広間で朝食が終わると、試験を受ける生徒は全員玄関ホールで、テストを受ける準備をしていた。
テストは大広間で受ける事になっており、寮ごとに分けられたテーブルは除かれ、1人用のテーブルが並べられる。
9時30分になると、クラスごとに大広間に入ることになっている。
待っている間、クリスは覚えた知識を何度も頭の中で反芻していた。
やや緊張しているが、その方がケアレスミス等をする恐れがない分良い結果が出せるだろう。
深呼吸をし、目をつぶってその時が来るのを待っていると、いつもの様に厳格なマクゴナガル先生の声が聞こえた。
「グリフィンドール5年生、お入りなさい」
生徒はA・B・C順に並んだ机に座り、合図とともにテスト用紙をめくった。
初めのテストは『呪文学』だ。どんな難問が出るのかと思ったが、案外簡単な問題だった。
少なくとも、クリスにはそう感じられた。これなら良い成績がとれそうだ。少なくとも筆記だけは。