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ハリー・ポッターと沈黙の天使

第37章 【真の悪夢】


「――そこまで」

 再び厳格なマクゴナガル先生の声がして、筆記試験が終了した。
 生徒たちは問題用紙を持って席を立ち、ぞろぞろと大広間を出て行った。
 あるものは満足そうに頬を高揚させ、またある者は絶望に顔を青ざめている。
 クリスは間違いなく前者だった。そして、もちろんハーマイオニーも前者だった。

「良かったわね。範囲通りの問題が出て」

 昼食の席で、ハーマイオニーが嬉しそうに言った。
 それとは反対に、ロンは厳しい顔でため息ばかりついていた。
 ハリーは自信がなさそうな顔をしていたが、少なくともロンよりはマシだった。

 午後になり、実技試験の時間がやって来た。
 生徒たちは大広間の近くにある小部屋に入り、それぞれ試験を受けた。
 クリスは待っている間、何度か杖を振ったが、やはり火花以外何も出なかった。

「グレイン・クリス。入りなさい」

 名前を呼ばれ、クリスはハリー達と別れて小部屋に入った。
 試験官はだいぶ年を取っていたが、厳しい眼光は衰えを知らなかった。

「グレイン――なるほど、噂のクリス・グレインだね。私はマーチバンクス。どうやら資料によるとPMCSに罹っているようだが、試験は試験。残念だが受けてもらうよ」
「はい、宜しくお願いします」
「ではまず、このスプーンを曲げてごらん」

 マーチバンクスはこともなげに言ったが、クリスはとてもそんな事が出来るとは思わなかった。
 試しに教科書通りに杖を振ったが、スプーンに火花が当たってはじけ飛んだだけで、曲がることは決してなかった。
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