第37章 【真の悪夢】
「勝ったよ!僕ら勝ったんだ!!グリフィンドールの優勝だ!!」
ロンが嬉しそうに、本当に嬉しそうに駆け寄ってきた。
優勝杯を両手に掲げ、深紅の旗をマントの様に肩にかけている。
チームのキャプテン、アンジェリーナは号泣して、マスカラが落ちて滝の様な黒い涙を流していた。
他のグリフィンドールの生徒たちも、まさか最後の最後で逆転するなど夢にも思わなかったんだろう、肩を組んで歌まで歌っている始末だ。
この喜びの最中に、ロンにグロウプの事を知らせるのは酷だと思った3人は、取り合えずお祭り騒ぎに混ざって、現実逃避を始めた。
* * *
レイブンクロー戦後、チームに勝利をもたらしたロンは、夢見心地で毎日を過ごしていた。
廊下で人と行き交う度、熱い視線を浴びせられることに快感を覚えたロンは、その度に試合の話をはじめた。
クィディッチが大嫌いだと豪語するクリスにも臨場感たっぷりに試合の話しを聞かせたので、ブチ切れたクリスがグロウプの話しをして目を覚まさせてやった。
「……悪夢だ」
そうしたらロンの顔から笑顔が消え、クリスと一言一句同じことを言った。
クリスは内心「ざまーみろ」と思った。これで当分クィディッチの話しはしないだろう。
「さらに良い事を教えてやろう、ロン。『O・W・L試験』まであと1週間だ」
「やめてクリス、その呪文は僕にも効く」
絶句しているロンの隣で、ハリーが耳をふさいだ。そう、本当の悪夢はここから始まるのだった。