第37章 【真の悪夢】
「ねえ、ハグリッド。もしよ、もしハグリッドがクビになったとして、私たちはどうすれば良いの?エサ――いえ、食事とかを届けに来ればいいの?」
「いや、食いもんは自分でどうにかできる。鳥とか、鹿とか……コイツに必要なのは“友達”だ。話しかけて、とにかく言葉を覚えさせねぇと。そんで、ちぃっと礼儀を教えて、コイツが無害だってみんなに分かってもらえれば――」
「無害ですって!?」
ハーマイオニーの金切り声に刺激されたのか、グロウプの首がこちらを向き、土だらけの巨大な手を4人にめがけてブンと振った。
クリス達は間一髪のところで避けたが、鼻先をかすめてしまったハグリッドは、だらだら鼻血を流していた。
「ハグリッド!こうやっていつもケガしてたんだね!コイツが暴れるから!!」
「コイツは自分の力が分かんねぇんだ。慣れたら大丈夫だから」
どこからその自信がわいてくるのか、クリスには理解不能だった。
3人は沈黙し、ハグリッドはその沈黙を了解と取った。
斯くして、ハグリッドがクビになったら、1週間に1度くらいのペースでこの小さな巨人のグロウプに話しかけに来るという約束を結んでしまったのだった。
「……悪夢だ」
禁じられた森をぬけ、ハグリッドが小屋から十分距離を取ると、クリスがボソッと呟いた。
ハリーとハーマイオニーはもう口をきく元気もないみたいだった。
ホグワーツ城に帰る途中、グラウンドの方から歓声が聞こえてきた。
そう言えば、今日はグリフィンドール対レイブンクロー戦の最終試合だった。
「ちょっと寄ってく?」
「嫌だ」
グロウプのお陰で神経が参っているのに、大嫌いなクィディッチの試合なんて拝みたくない。
クリスが1人、城に帰ろうとしていると、歓声の方からどんどん城の方に近づいてきていた。
どうやら試合が終わって皆はしゃいでいるらしい。
「ハリー、クリス、ハーマイオニー!!」
遠くの方からロンの声が聞こえてきた。声の調子からして、明るすぎる。
もしかしたら、もしかして――……