第36章 【W・W・W】
「――ああ、やはり朝は1杯の紅茶からだな」
クリスが予鈴まであと5分と言う時間に、いつも通り優雅にのんびりと紅茶を飲んでいると、イライラしたハーマイオニーがドカッと隣に座った。
その向かいにハリーとロンが同じようにドカッと座った。
「そう言えば、フレッド達が『姿くらましの飾り棚』に突っ込んだモンタギューとか言う生徒、見付かったらしいぞ」
「……」
「……」
「それが何故か男子トイレの便器から出てきたらしい。ざまーみろだ、はっはっはっはっは~……」
クリスの笑い声が、大広間に虚しく響いた。
折角フレッドとジョージが素晴らしい卒業(?)をして、生徒たちの間にに反アンブリッジという反骨精神と共に一体感が生まれているというのに、4人の心はバラバラだ。
と、いうのもハリーが『閉心術』の特訓再開を、スネイプに頼みに行かない所為であった。
「なあ、私を間に挟まないでくれ」
「貴女も同罪です!」
「君は僕の見方だろ?」
「ハリーが可哀そうじゃないか!」
「あーもう。分かった、分かったから、みんな落ち着こう」
本来ならこれは私の役目ではないはずだと思いながら、クリスはふーっとため息を吐いた。
何故こんな事になったのか。全ての原因は、ハリーが好奇心に駆られ『憂いの篩』でスネイプの過去を覗いてしまったことから始まる。
その過去と言うのが、ハリーの父親たちが「退屈だ」と言う自分勝手な理由で、スネイプを魔法で逆さづりにし、公衆の面前でパンツを脱がせようとしたところらしい。
なぜ“らしい”なのかと言うと、パンツを脱がす前に、本物のスネイプが背後から現れたと言うのだから、その時のハリーの恐怖は察するに余りある。
そんな思い出したくもない屈辱的な記憶を見られ、当然スネイプはキレる。ハリーは逃げる。
決して見てはいけない過去を見てしまった上で『閉心術』の特訓を受けられるのか否か――というところで、3人の意見が分かれた。