第36章 【W・W・W】
次の日の授業が終わったら、大広間に続く大階段に来い。フレッドとジョージは確かにそう言った。
やけに自信満々だったが、いったい何が始まるんだろう。クリスは不安もあったが、ワクワクもしていた。
反対にハーマイオニーはこの計画を何が何でも中止させようと、朝から1日中警告してハリーとクリスの後をつけまわった。
クリスは慣れたもので、それを右から左に聞き流していたが、ハリーは結構参っていた。それでも、カバンの奥に透明マントとシリウスのナイフをしっかり忍ばせて、準備は万端だった。
そして訪れた約束の時、ハリーとクリス、そしてハーマイオニーとロンは大広間に続く大階段の上に立った。
引き返すなら今しかない。クリスはハリーに向かって最終確認をした。
「本当に良いのか、ハリー?」
「うん、それじゃあまた後で」
「待って、ハリー!!」
ハーマイオニーの願いもむなしく、ハリーは透明マントをかぶり姿を消した。
こうなるともう捕まえる事は出来ない。ハーマイオニーが怒りや心配や色々な感情がごちゃ混ぜになって目を真っ赤にして涙を浮かべていると、ロンがポンポンと背中を叩いた。
「あー、その……ハーマイオニー。大丈夫だって、ハリーなら心配いらないさ」
「もう良いわ!好きにしてよ!!私、談話室に戻るわ!!」
ついにハーマイオニーがキレて、談話室への階段を駆け上って行った。――と思ったら、今度はこっちに向かって駆け下りてきた。
彼女の後ろには、100個近いねずみ花火がシュルシュル火花を散らして空中を飛んでいる。クリスは「ついに始まったか」とほくそ笑んだ。
反対側の廊下からは、緑と金色の火花で出来た大きなドラゴンが数匹、ホールの天井を行ったり来たりしている。また、ロケット花火が連続で打ち上げられ、ヒューっとピンクの螺旋状の光を発しながらパーンと軽快に音を響かせている。
それだけではなく、バンバンと耳をふさぎたくなるような爆竹がそこらじゅうで破裂し、誰かが何かを叫んでいても、花火の音以外何も聞き取れない。
「ははっ、あはははははは!!やるな、あの二人!!」
クリスの高笑いすら、花火の音にかき消されて誰の耳にも届いていないだろう。それを良い事に、クリスはこの騒動が終わるまで腹の底から笑い転げた。