第36章 【W・W・W】
それにしても、父親の真の姿か――クリスは自分の身に置き換えてちょっと笑ってしまった。
知ったところで現実がどう変わるものでもないが、確かに子供にしてみれば大事件だ。それが分かるから、クリスとしては手を貸さない訳にはいかないと感じた。
「よし、ハリー。君に覚悟があるなら私は付き合おう」
「クリス!?」
「ありがとう、クリス!」
「で?算段はあるのか?どうやってアンブリッジの部屋に忍び込む?」
「シリウスからもらったナイフがある。どんな鍵でも開けられる魔法のナイフだ」
「それは良いな」
それだけ言うと、クリスはクルッと背を向けて女子寮への階段を昇って行った。
「どこ行くの?」
「ちょっとな、すぐ戻る」
クリスは自室に戻って「あるもの」を取ってくると、今度は男子寮の階段を昇って行った。
それから、金のプレートに『ジョージ・ウィーズリー』『フレッド・ウィーズリー』と書いてある扉をノックもなしに開けた。
「おーい、お騒がせ兄弟。ちょっと頼みがある」
「うわわわわっっ!」
「なんだクリスか、脅かすなよ」
「すまん。で、頼みなんだが――」
まるっきり悪いとは思っていない口ぶりで謝ると、クリスは手に持っていた「あるもの」を見せた。
それは2年前にルシウスおじ様からクリスマスにもらった、大きなダイアが幾つも散りばめられたネックレスだった。
「これでお前たちの持っている悪戯グッズを、買えるだけ買いたい」
「理由は?」
「アンブリッジの鼻を明かすのに、少々」
「はは~ん」
フレッドとジョージはそれを聞いて、ご馳走を目の前にした野良犬の様な顔で舌なめずりをした。顔には「この機会を待っていた」と書いてある。
「Ok、折角だから道具の使い道は僕らに任せてよ」
「それは良いが、本当に頼んで良いのか?下手したら退学だぞ?」
「そんなもん、俺たちにはまた区関係ない。むしろ好都合だ。それじゃあ――」
フレッドとジョージはパチン!と小気味よくハイタッチを交わすと、見分けの付かないほどそっくりにニコーッと笑ってみせた。
「「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの品をとくとご覧あれ!!」」