第4章 【大人げない大人】
この会話から遠ざかろうと、クリスはシチューを口に運びながら、焦って周囲を見渡した。
フレッドとジョージは、魔法を使ってローストビーフを切り分けようとして失敗し、母親から怒られていた。
ハーマイオニーとジニーは、トンクスが次々と自分の鼻を変形させているのを見て笑っていた。
ウィーズリーおじさん、ビル、ルーピン先生の3人はヒソヒソと話し込んでおり、マンダンガスは純銀製のゴブレットを物欲しげな目でしげしげと眺めていた。
どこにも身の置き場がないと分かると、クリスは独り黙々と食事を続けた。
皿によそられた料理もなくなり、みんなのお腹がいっぱいになると、そろそろお開きの時間がやってきた。
デザートのケーキも食べ終え、それぞれ満足気にくつろいでいると、ウィーズリーおばさんがお皿を片付けながらのんびり言った。
「そろそろお休みの時間ね。みんな上に――」
「いや、待ったモリー」
おばさんの言葉をシリウスが止めた。みんなの顔がシリウスに向けられると、シリウスはまたしても驚くべき言葉を放った。
「ハリー、私には信じられない。なぜこの屋敷に来て、まだ1度もヴォルデモートについて尋ねないんだ?」
まるで季節が夏から真冬に変わったかと思うほど、部屋の気温が一気に下がった。くつろいだ空気は一変し、皆それぞれ緊張した面持ちでシリウスを見つめている。
クリスは心臓がドンクと大きく脈打つ音を聞いた。ハリーはロンとハーマイオニーの顔を一度見ると、改めてシリウスに向き直った。
「聞いたよ!ロンとハーマイオニーに!だけど2人とも騎士団に入っていないから何も言えないって――」
「その通りよ!」
ウィーズリーおばさんの声が厨房中に響いた。目を見開き、唇は小刻みに震えている。おばさんはシリウスにキッときつい視線を投げつけた後、大きく息を吸った。
「あなた達はまだ若すぎます!だから――」
「だから質問してはいけないと誰が決めた?ハリーはヴォルデモートが復活した現場に居合わせた。その上丸々1か月間マグルの家に閉じ込められていたんだ。この子には知る権利がある」
「シリウス!!ハリーはまだ15歳よ!?」
「じゃあ成人した俺達はどうなるんだ!?」
フレッドが立ち上がった。と、同時にジョージも立ち上がった。2人とも17歳で、魔法界では成人している身だ。