第35章 【進路相談】
「何か良いアイディアはないものかなぁ……」
ペラペラとパンフレットをめくっては見たが、今のクリスには、見るだけ無駄の様な気がしてきた。
魔法が使えないのだから、まず一般の職には就けない。となると残された道はただ一つ、マグル関係の職に就くことだ。
ハーマイオニーに渡されたパンフレットで調べてみたら、マグル関係の職に就くのに必要な科目は、殆どが『マグル学』のみだった。
「『マグル学』を生かした将来か……何があるかな?」
「う~ん……そうだっ!僕のパパみたいに『マグル製品不正使用取締局』で働いたら!?」
「おおー!ナイスアイディアだ、ロン!!おじさんのもとでマグル製品に囲まれて働くなんて夢みたいだ!!」
「……盛り上がっているところ悪いけど、魔法省で働くには当然、魔法も使えなきゃダメなのよ?」
ハーマイオニーの冷静なツッコミが入ると、クリスの気持ちは空気のぬけた風船のようにしぼんでいった。
そしていざイースター休暇が始まると、今度は試験まであと6週間しかないと言う現実が差し迫って来た。
クリスはもうこの際、進路のことは置いておいて、目前に迫った試験に重点を置くべきだと考えた。
どっちにしろ筆記しかない試験もあるのだし、最悪それで高得点を取ればどこかの企業が拾ってくれるかもしれない。
もしもそれでダメなら、マグルとして憧れの電気屋で働く。そう腹をくくった。
そんな荒んだ日々に潤いを持たせてくれるのが、バーニー先生とのヒーリングと、フィレンツェの課外授業だった。
ヒトとケンタウロス。どちらも相容れぬ存在だが、机に向かって勉強ばかりしてたまったストレスを発散するにはもってこいだった。
反対に、ハリーは毎週月曜になると、ゾンビの様になって地下室から帰って来た。
スネイプとの1対1と言うだけで気が滅入るのに、心を無理やり開かれてはストレスもたまる一方だろう。
そんなハリーに、何かしてやれることはないかと思い、丁度満月の晩だったので、クリスはフィレンツェに訊いてみた。