第34章 【DA危うし!】
これで良いだろう、私一人が捕まったって大きな問題にはならない。
そう思っていたところで、思わぬミスを見つけた。今まさにドビーが頭をぶつけていた壁に飾られた――メンバー全員の名前が書いてある連盟書だった。
クリスはとにかくその紙を破って、ローブの内側にかくした。
「オーッホッホッホッホ!!ついに見つけたわよ、クリス・グレイン!!」
まるで鬼の首を取ったかのように高笑いをするのは、パグ犬そっくりなパンジー・パーキンソンとその仲間たちだった。
(チッ……見られたか?)
いや、もし見ていたらこの単細胞生物の事だ、必ず最初に連盟書を取り上げるはずだ。
クリスは見られていないと信じ、三文芝居を演じた。
「私の秘密の部屋に何の用かな?パンジー・パーキンソン。我がお父様に恐れをなして逃げ腰で挑んでくると思ったが……これはこれは、意外に元気そうだ」
口の端だけを持ち上げ、にやりと笑うとパンジーたちが怯むのが分かった。しかしパンジーは自分を奮い立たせるようにグッと拳を握って、息を思いっきり吸った。
「『お父様』ですって?笑わせるじゃない。あんたは最強の武器を手に入れたみたいだけど、私はその代りに最高のものを手に入れたわ」
「最高のもの?」
「ドラコよッ!私が手に入れたかった、最初で、最後の、最高の人よ!彼が居れば何も怖くない!『例のあの人』だって『闇の姫君』だって関係ない!!私には彼しかいないの!彼しか欲しくないの!!」
その言葉を聞いて、クリスは世界が歪んでいく思いがした。
狂っている――昔のパンジーは恋に恋するただの女の子だったはずだ。それが『闇の帝王』すら怖くないだと?
いったい何が彼女をここまでにした?何がここまで彼女を狂わせた?
「後の望みは……そうね、貴女を消すだけよ、クリス。貴女が消えれば、彼は完全に私のものになる……」
「まて、消すってどういう意味だ?まさかお前――」
「簡単よ、今の貴女は魔法が使えない。ちょっと事故が起こったとしても、誰も気に留めやしない」
そう言って、パンジーは用意してあったかのように懐から杖を取り出した。それを合図に、取り巻きたちがクリスの四肢の自由を奪う。
クリスは何とか拘束から逃れようとジタバタもがいてみたが、一向に抜け出せる気配はない。