第34章 【DA危うし!】
パンジーの目は完全にイっている。これはまずいぞ、こんなもの相手に口八丁手八丁でどうにかなるわけがない。
「彼が言うの。……あいつは僕が助ける……あいつは僕のものだって……」
「落ち着けパンジー。いいからその杖を床に置け」
「どうして私を見てくれないの?私は、いつだって貴方だけを見ているのに……」
「パンジー、目を覚ませ!」
「うるさい!!あんたさえ、あんたさえ居なければ私は――!!」
パンジーが振り下ろし杖から、赤い閃光が飛び出した。体が吹き飛ぶほど威力はなかったが、それでも得も言われぬ激痛みが走る。
だがクリスは歯を食いしばって叫び声を我慢した。何故だか分からないが、ここで泣き叫んだら本当に負けを認めるみたいで嫌だったのだ。
息をすると痛みで意識が飛びそうになったが、クリスは歯を食いしばって精一杯強がって見せた。
「どうした、これで終わるかな?どうせならもっと痛めつけても良いんだぞ?」
「うるさいわね――ん、何?この紙切れ」
それまでクリスだけに注目していたパンジーが、ローブから少しはみ出た連盟書に目をやる。
万事休す――せっかく隠し通せたと思ったのに。これが見つかってしまっては苦労した意味がない。クリスは思わず苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。
「D……A?ダンブルドア・アーミーね。つまり、これがあなた達の名簿ってわけね」
いつもクリスが見せる人を馬鹿にした笑顔の3倍は邪悪な顔で、パンジーが笑った。
ここでホラを吹けるほどクリスが達観していれば良かったのだが、心身ともに痛めつけられたクリスにとってそれは難しい注文だった。
クリスの表情を読んだパンジーは、すぐさまそれを側近の1人に渡した。
「これをアンブリッジ先生に渡して!今すぐ!――さて、私たちは楽しい楽しい時間に戻りましょうか、クリス?」
「これが楽しいだと?ずいぶん倒錯的に成長したみたいだな」
「そうよ、わたしはもう貴女の知るパンジーじゃないの。彼を手に入れるために、努力して、努力して、努力して、努力して――」
「それで?手に入ったのか?それとも手に入らなくてこんなにイラついているのか?」