第34章 【DA危うし!】
ある時、クリスが指南書を読みながら杖の振り方を練習していると、突然扉が開く音がした。
振り返ると、それはドビーだった。どうしてここにドビーが?と思ったが、声に出す前にドビーが勢いよくハリーの腰辺りにしがみついた。
「……ド、ドビー?」
「――リー・ポッター。ハリー・ポッター」
「どうしたのさ、こんなところに」
ドビーの目は大きく見開かれ、涙にぬれていた。そればかりかハリーのローブを握る手が震え、何か言葉を絞り出すように口を曲げている。
――何か様子がおかしい。クリスはサッと立ち上がると、ドビーが自分を痛めつける前に両手を掴んだ。
「ドビー、どうした?何があった?」
「ドビーめは、忠告に……でも、屋敷しもべは、話すことを……禁じられて」
「これは命令だ、ドビー、お前の知っていることをすべて話せ」
長年付き合いのあるクリスの命令でも聞けないのか、ドビーはハリーに向かって「察してくれ」と言わんばかりに涙目で訴えた。
そしてジタバタと暴れてクリスの手から逃れ、壁に頭を打ちつけた。
こういった事は前にもあった。ハリーとロンがドビーを捕まえて無理やり自傷行為を止めさせると、ドビーは食いしばった歯の隙間から「あの女が……あの女が……」と呟いた。
「あの女?」
「まさかっ、アンブリッジ!?」
「アンブリッジはここを知らないはずだろ!?」
今や『必要の部屋』全体が異様な緊張感に包まれていた。
バレた――?なぜ、いったいどうやって?クリスはぐるりと部屋を見渡して集まった生徒を見た。
会合と言えどこの大所帯だ。最近はクィディッチの自主練や宿題を片付けるとかで休む生徒もいる。なので気にしていなかったが、絶対にこの中に理由なく休んでいる生徒がいるはずだ。
「ドビー、密告者か!?そうなんだろう!?」
「そうです!ドビーめはそれを伝えに来ました!!」
ドビーが叫ぶと同時に『必要の部屋』は騒然となった。
ハリーはとにかく全員を逃がそうとしんがりを務めたが、最後の叫び声と共に、本棚の角に頭をぶつけて自分を傷つけているドビーにまでは気が回らなかったらしい。
クリスがドビーの両腕を握り、無理り外へほっぽり出すと、部屋はもぬけの殻になっていた。