• テキストサイズ

ハリー・ポッターと沈黙の天使

第33章 【占い学の先生】


「君たちがシビル・トレローニーから何を学んだかは知りません。ですが、おおよそヒトの持つ微々たる知識の一部でしょう。私が教えるのは森羅万象に通ずるケンタウロスの知恵の一部であり、この星が生まれた時より培われてきた大いなる叡智の一部です」
「それで、具体的には何が視えるんですか?」

 パーバティが手を挙げて、少しトゲっぽく質問した。尊敬するトレローニー先生を貶され、機嫌が悪くなったみたいだ。
 フィレンツェは、はあ…とため息を吐いて、苦しそうに首を横に振った。

「星から多くの事を知ることはあっても、ヒトの予言した下らない戯言の様に、具体的な何かを知ることはありません。むしろそう信じる事こそが種族の限界を決める枷になっているのです。もっと視野を広く持って下さい。ヒト起こすことなど、この星には些事な事。しかしその些事が、時にはこの惑星にとって大きな意味を持つこともあります」

 フィレンツェは夜空を仰ぎ、赤々と光る火星を指さした。

「御覧なさい、火星の輝きが増しています。火星は厄災の星とも呼ばれ、星々に危険をもたらし来ました。いま火星が輝いているのは、この惑星に争いの種を蒔こうとしているに違いありません。では我々ケンタウロスが、どのようにしてこの火星に振りそそぐ厄災を解き明かそうとしてきたかを、実際に薬草を燃やして、その炎や煙で占ってみましょう」

 生徒たちは『薬草学』で学んだ何種類かの薬草を集めると、数人のグループに分かれて火を焚いた。
 しかしフィレンツェが示した草の燃え方や煙の臭いなど、誰にも分らなかった。にも拘らず、フィレンツェはそれが当たり前とばかりに気に留めもしなかった。
 これが分かる様になるまでケンタウロスで10年以上かかるし、ヒトなら一生かかっても分かるか分からなかだろう。
 むしろヒトだろうがケンタウロスだろうが、それが分かったと傲り高ぶることこそ間違いだと言っていた。

 つまり長々と説明されたが、占いを100%信じる方が間違っているというのだ。
 それじゃあいったい何の為の『占い学』なのかと問いたくなったが、訊いたとことでまともな答えが返ってこないことは確かだった。
/ 363ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp