第33章 【占い学の先生】
「やあハリー・ポッター、来たね。それにグレインの名を持つ娘も」
「久しぶりだね、フィレンツェ」
「覚えててもらえて何よりだ」
「忘れるはずがない。僕らは再び巡り合う運命だっだのだから」
フィレンツェは愛想笑いの一つもしなかったが、その驚くほど青い瞳が、言葉に嘘偽りない事を示していた。
ハリー、ロン、クリスの3人はちょっとそわそわした気分だったが、他の生徒と同じように芝生の上に腰を下ろした。
「この場所は君たちには馴染みがないだろう、なぜなら私の生まれ故郷に似せてあるからです。本来ならそこで――または禁じられた森で授業をしたかったのですが、それは最早叶わぬ夢となりました」
フィレンツェは俯き、その青い瞳に少し憂いの色が滲んだ。クリスの斜め前に座っていたパーバティが、恐る恐る手を挙げて訊ねた。
「あの……どうして叶わないんすか?禁じられた森だったら、私達ハグリッドと一緒に何度も入った事があります」
「君たちの問題ではありません、これは私の問題です。私が――私が人間の為に働くことを、群れの仲間たちが裏切りだとみなしたからです」
そう言えば1年生のあの時も、ハリーを助けようとしたフィレンツェと、他のケンタウロスが激しい口論を交わしていた覚えがある。
ハリー1人を助けるのすら口論になるくらいなのだから、ホグワーツで働くなど、森を追放されてもおかしくはないだろう。
「私の話しはもういいでしょう――では、授業を始めます。自由にあお向けになり、楽な姿勢を取って下さい」
生徒がそれぞれ芝生の上に仰向けに寝そべると、徐々に木漏れ日が弱くなり、黄昏の空を過ぎて濃紺の空に星が瞬き始めた。
ここは確かに教室で、この夜空はどんな仕掛けがあろうと作り物のはずだ。だが見た目は本物そっくりで、生徒はみんな思わず感嘆の声を上げた。
「星の巡りは運命の巡りです。そしてその瞬きは命の瞬き。星が流転するのと同じく魂も流転し、あまねく星々の動きを静かに見守ることは、自然を生きる全ての命の運命を見つめる事と同じです。我々ケンタウロスは長い年月をかけて、星の動きを見ると共にそれらを静かに見守ってきました」
なんか難しい事を言っているが、とにかく星の動きを見て全体を占えという事だろう。少なくともクリスはそう解釈した。