第33章 【占い学の先生】
次の日の朝から、大広間ではフィレンツェの話しで大賑わいだった。
『占い学』を取っている生徒は、どんな授業になるのか期待に胸を膨らませ、あることないこと噂し合った。
トレローニーに毎回不幸な予言ばかりされていたハリーはもちろん、クリスもフィレンツェの『占い学』に胸を躍らせていた。
ケンタウロスは、星を見て運命の行く末を占うと聞く。毎回星を見て過ごすなんて、天文学大好き人間なクリスには、正にうってつけの授業だった。
「3年生の時に『占い学』を辞めて、後悔してるんじゃないの?」
昼食の時、ロンがハーマイオニーに向かってニヤニヤ笑いながらそう言うと、ハーマイオニーは一瞬だけロンに冷たい視線を浴びせた。
「まさか、私の決断は正しいわ。あの時は授業を取り過ぎていたし、それに私の取っている『数占い学』は『占い学』よりも高度で実践的だわ」
「言うねぇ。それじゃあフィレンツェの授業に興味はないんだ?」
「興味云々の話しはまた別よ。授業が終わったら、感想をたっぷり聞かせて頂戴」
そう言って、ハーマイオニーは炒り卵を大きな口でペロリと平らげた。
昼食が終わり、ハリー、ロン、クリスの3人はハーマイオニーと別れ11番教室へ向かった。
これまでの『占い学』の教室ははしごを使って昇らなくてはならず、とてもじゃないがフィレンツェが昇るには無理があるので、教室が変更になったのだ。
11番教室は、今まで使った事の無い空き教室だった。ホグワーツ城内のほどんどをインプットしているクリスでさえ、この教室の覚えは薄い。
しかし、いざ扉を開けてみて、クリス達は驚きのあまり一瞬言葉を失った。
ただの埃っぽい空き教室だったはずが、緑豊かな森の広場になっていたからだ。
「な、なに……これ?」
「これは驚いたな……」
その見事な風景に、クリスは開いた眼が閉じられなかった。地面にはふさふさの芝生が生え、かわいい小さな花まで咲いている。
葉の生い茂った木が辺りを覆うように植えられ、心地よさそうな緑の光が差し込んでいる様は、小さいころ絵本で読んだ妖精の国、ティル・ナ・ノーグを思い出させた。