第33章 【占い学の先生】
まだ寒い北風と共に、今度はダンブルドア校長の凛とした声が玄関ホールに響いた。
どこに行っていたのか、正面玄関の樫の扉を背に、ダンブルドアはいつもの様に悠々と髭を撫でながら、波の様に引いていく生徒たちの間を1歩1歩ゆっくり進んできた。
「どういうおつもりです?ダンブルドア校長」
「なに、校長としての務めを果たそうと思っての。近頃はめっきり仕事が少なくなって」
「それは良い事ですわ。魔法省の云う教育令がしっかりと根付いている証拠ですから。現に大臣は――」
「まあそう焦らんでも、儂からも話をさせてくれぬか?」
「さて、お話しとは?」
「他でもない、新しい『占い学』の先生の紹介じゃ。――入ってきてくれ」
ダンブルドアの声と共に入ってきたのは――明るい金髪に、驚くほど青い目をしたケンタウロスだった。クリスとハリーは思わず顔を見合わせた。
そうだ、あれは忘れもしない、1年生の時に禁じられた森で出会ったケンタウロスだ。
開け放された正面玄関の扉を背景にスッと立つその姿は、あの夜森で出会った時よりも強い威圧感を放っていた。
「新しく『占い学』を受け持ってくれることになったフィレンツェじゃ。此度は儂の説得に応えてくれてな。皆、快く迎えて欲しい」
フィレンツェ自体は人間に好かれようが嫌われようが、どっちでも構わないと言いたげな顔だったが、何より面白かったのは、美味しいところを持っていかれたアンブリッジの顔だった。
ポカーンと大口を開け、言葉が出てこない様子は、ガマガエルを通り越してまるでカバの様だった。
ダンブルドアとフィレンツェは一緒に廊下を曲がって姿を消し、トレローニーはマクゴナガル先生に支えられて大階段を昇って行った。きっといつもの北塔の天辺に戻されるのだろう。
一件落着し、生徒たちも思い出したように大広間に入って行った。
その場に取り残されたアンブリッジは、夕食が終わる時間になっても大広間には入って来なかったという。