第32章 【真実を告げる雑誌】
ネビルとのそんなやり取りを交わしてから数時間も経たないうちに、アンブリッジによって新しい告知がなされた。その名も『ザ・クィブラー』所持禁止条例だ。
余りにもバカバカしく、あまりにもケッサクなこの条例は、ありとあらゆる場所に貼り出されたが、わざわざそんな事しなくとも十分生徒たちの注目の的になった。
あっちでヒソヒソ、こっちでヒソヒソ。生徒たちは禁止にすればするほど、この話題を持ち出したがった。
ハリーを初め、ロンやハーマイオニーはいつも誰かに囲まれていた。
去年の6月、ダンブルドアが宣言した日から考えれば長かったが、ようやく生徒のほとんどがヴォルデモート復活を信じはじめた。
と、同時にクリスがヴォルデモートの娘だとバレて、ハリー達以外の殆どの人間が近寄らなくなった。
例えどんな経緯であろうと『例のあの人』の実子だというのは、皆にとって脅威なのだ。
例外はやはり、と言うか何と言うか、フレッドとジョージとリーの3人だった。
この3人は宿題が出されると、ぬけぬけと「クリスに頼んで『例のあの人』に宿題を取り消させるように言ってもらう」と言って先生を脅し始めた。
それを耳にしたクリスは速攻マクゴナガル先生に告げ口して、逆に宿題を3倍にさせた。
あとはヴォルデモートの娘だとバレて困ることは、これと言って無かった。
グリフィンドール寮内でも、もともと『グレイン家の娘』として特別な目で見られていたので、皆がよそよそしくなったからと言って、困る事でもなく、ただ「あー、昔に戻ったな」くらいの感想だった。
そんな事よりも、目下の問題は毎日出される宿題の量だった。先生方は例えクリスの正体を知っても宿題の量を減らそうとはしなかった。
主だった先生は「そんなものもうダンブルドアから聞いている」と云わんばかりだったし、他の先生は「魔法が使えないから怖くない」だった。
そう、例えヴォルデモートの娘だろうが何だろうが、今のクリスに魔法は使えない。それがネックだった。
授業中もⅮAの会合中も、必死なって練習したし、月に一度のヒーリングも文句1つ言わずにやった。
だが、魔法はおろか杖から火花一つ出ることはなかった――。