第32章 【真実を告げる雑誌】
『ザ・クィブラー』が発行された日は、クリスにとってある意味最高に笑える日になった。
朝から人の顔を見るなり、生徒たちはまるで波の如くひいていった。最初は何かと思ったが、大広間に行くとハリーの元に山の様に手紙が積まれていた。
それを見て、クリスは何が起こったのか悟った。
「お早う、ハリー。ラブレターか?」
「全部じゃないけどね。クリスには?」
「一か八か、ヴォルデモートの娘に手紙を送ろうって馬鹿は居ないだろ」
いつもの様に紅茶を嗜みながら、クリスはハリー宛の手紙を開いた。中には「このキチガイ!」と書いてあった。
「この騒ぎは何です!?まさか、またミスター・ポッターですか?」
「いえ、ハリーだけじゃありません。どうやら私も同罪みたいです」
教職員席から、アンブリッジが飛び出してきた。うんざり顔でハリーが差し出した『ザ・クィブラー』の表紙を見て、クリスがにやにや笑いながら話しかけた。
表紙にはハリーとクリスが左右対称に写り、真っ赤な見出しで『魔法界に衝撃・善と悪の寵児』と書いてある。
「この間ホグズミードに行った際、僕とクリスででインタビューを受けたんです。これは読者からの熱いメッセージみたいです」
「こんな……こんな事って……」
「罰則にしますか?ミセス・アンブリッジ。ヴォルデモートの実子であるこの私を?」
ヴォルデモートから受け継いだ赤い瞳でじっとりと見つめながら、クリスは笑った。こんな楽しい事は他に無いだろう。テーブルの向かい側では、ハリーも似たような顔をしていた。
「いいでしょう――ミスター・ポッター、ミス・グレイン。今後のホグズミード行きを禁止します」
「おーっとそれじゃあお父様に手紙を送らなきゃ。可愛い娘が週末の楽しみを奪われましたってね」
「あなたのお父様は、ミ、ミ、ミスター・グレインは、なななくなったんでしょう?」
「おや?父様が亡くなったとお認めになったのですか?それは僥倖」
「こっ、このっ……!!」
「なんです?ミセス・アンブリッジ」
クリスの言葉一つに、アンブリッジの顔が、真っ赤になったり真っ青になったり、それを通り越してまだら色になるのを見て、ハリーが笑いをこらえていた。
ただそんな中、テーブルの隅でネビルが暗い顔をしていた――。