第32章 【真実を告げる雑誌】
「はッ!おあいにく様、誰がそんな記事を読むもんざますか。私はね『注目される記事を書く』のが仕事ざます。ポッターがイカレたなんて記事、もう世間には山の様にあるざます」
「ハリーはイカレてなんていません!」
「どっちにせよ、『日刊予言者新聞』はポッターのネタなら沢山ざます!」
「じゃあ『日刊予言者新聞』じゃなきゃ良いんでしょ?」
とろん、と夢見がちにカクテルをかき混ぜていたルーナが、2人の間に突っ込んだ。
ルーナの目は相変わらずカクテルに注がれていると思ったが、よく見るとそのグラス越しにハリーを見ていた。
「パパが編集長をしてる『ザ・クィブラー』なら、記事にしてくれるよ。パパはそう言う、世間に伝えなきゃいけない真実をいつも記事にしてるもん」
「よ、よりによって『ザ・クィブラー』に私の記事を載せようってハラざますか!?とんでもない、私は降りるざます!いくら何でも『ザ・クィブラー』なんてアングラ雑誌に私の名前を載せる気はないざます!!」
「ちょっとは落ち着いて話を聞いたら?コガネムシさん」
ハーマイオニーがその単語を口に出すと、立ち上がりかけていたリータが、悔しそうにドカッと再び席に着いた。
「これはチャンスよ。誰もが『日刊予言者新聞』の集団脱獄の記事には疑問を抱いている。それなのに魔法省からではなく、あー……異色雑誌の『ザ・クィブラー』から現実性の高い記事が出た。読みたがる人は大勢出てくるわ」
「ハーマイオニー、それはあの晩だけじゃなく、私の……その、出生に関しても話さなきゃならないのか?」
「嫌?貴女が嫌なら伏せるわ。当然の権利ですもの」
どうなんだろう、もし自分がヴォルデモートの実子だと世間に公表されたら、まあ、気さくに近寄る生徒はいなくなるだろう。スリザリン生だって滅多には寄ってこなくなる。
だがこれは父の生死をはっきりさせるチャンスなのではないか。父の存在を色濃くすることで、魔法省も父の行方不明を無視する事が出来なくなる。
――よし!クリスは決心した。
「分かった、話そう。私の知る、私の全てを。ハリー、君はどうする?」
「もちろん話すよ。僕が虚言癖のイカレた少年かどうか、思い知らせてやる」
「それじゃあ皆、心の準備は良いわね?」
それから数時間にわたって、外の雨音を搔き消す様にハリーとクリスは胸の内をぶちまけた。