第32章 【真実を告げる雑誌】
「お久しぶりざます、ミス・グレンジャー。それと、ミス・グレイン」
「ええ、お久しぶりねコガネムシさん」
「ちょっと!その話題はまだ禁止のはずざますよ!」
ハーマイオニーがちょっと挨拶に刺激を加えると、リータ・スキーターは過敏に反応した。
リータ・スキターがコガネムシに変身する無登録のアニメ―ガスであることは、ハーマイオニーを含め数人しか知らない事実である。
リータは誰かに秘密を聞かれていないかと辺りを伺いながら、ハーマイオニーの正面に座った。
「で?条件はなんざます?」
「条件って?」
「トボケるんじゃないざます!私に記事を書かせるための条件ざますよ!」
「ああ、それね。それは――」
ハーマイオニーが言いかけた時、店内にびしょ濡れのハリーが入ってきた。後から同じくびしょ濡れのチョウも見えるかと思ったが、何故かハリー独りだった。
「ハーマイオニー!」
「あらハリー、ちょうど良かったわ。これで全員ね」
「いい加減話してくれないか?ハーマイオニー。こんな面子を集めて何をするつもりだ?」
「それはね、ズバリ――『ヴォルデモート復活の晩の真実』よ!」
ハーマイオニーの言葉に、リータはひっくり返り、ハリーとクリスは驚いて顔を見合わせ、ルーナはカブのイヤリングを揺らした。
いったいハーマイオニーに何があったんだろう、今更ヴォルデモート復活の晩の話しなんて。
例えどんなにハリーとクリスが真実を語ろうと、全て虚言壁の妄想で片づけられてしまう。それが分からないハーマイオニーではないはずだ。
クリスとハリーは顔を見合わせたまま、ハーマイオニーの真意を読み取ろうとした。
ハーマイオニーは店中の人間に訊かれても構わないと言いたげに、声を大にして話しだした。
「つまりはね、ハリーとクリスに、あの晩、何があって、誰に襲われ、どうやって逃げてきたかを話して貰いたいの。だって魔法省の嘘っぱちに付き合っていたら、アズカバンの脱獄同様いずれボロが出るわ。私はね、その前に少しでも人々の関心を引き付けたいのよ」