第32章 【真実を告げる雑誌】
馬車――もとい、セストラル車は、ガタゴトと音を立ててホグズミードへの道を進んでいった。
クリスは心中、ハーマイオニーが何を企んでいるのかドキドキしていた。
今更リータ・スキーターなんて引っ張り出してきたところで、誰も喜んで記事にしないだろう。
それでなくとも『日刊予言者新聞』はハリーとダンブルドアを、嘘吐きのガキと老いぼれジジイ扱いしているのだから。
それでも一応顔だけ見せておかないと、後でハーマイオニーの恨みを買うのは本気で勘弁願いたい。
ホグズミードに着くと、ハーマイオニーに言われるがまま『三本の箒』に入った。
中はホグワーツ生でいっぱいで、誰もクリス達が入ってきたことなど気にもしていない。
なるほど、以前シリウスが言っていた事は確かの様だ。
ハーマイオニーはキョロキョロ辺りを見回し、真ん中辺りのテーブルに座った。クリスも同様に席に着く。
バタービールを2つ注文して、冷え切った体を温めていると、不意に扉が開いてルーナが入ってくるのが見えた。
クリスは一瞬、ハーマイオニーに同席しても良いかと聞こうとしたが、躊躇った。ハーマイオニーがあまりルーナの事を快く思ってないからだ。
しかし驚いたことに、クリスよりも先にハーマイオニーがルーナに挨拶をした。
「こっちよ、ルーナ!」
ルーナは眠たそうなボーっとした顔でハーマイオニーを見ると、フラフラこちらにやって来た。
まさかルーナの事も記事にさせるのかと思うと、本当にハーマイオニーの事が分からなくなった。
「そっか、あんたもいたんだ。どう?セストラルは見えるようになった?」
「いや、まだだが……っていうか――」
「――ん、乾杯」
言い終わる前に、ルーナは運ばれてきたノンアルコール・カクテルを見て満足げに微笑み、グイっとあおった。きっとルーナに何か聞いても無駄であろう。
クリスはハーマイオニーに、これから何をやらせるつもりなのか尋ねたが、ハーマイオニーは「まだ役者がそろってないわ」とだけ言った。
そのうち、大雨の中レインコートを着たリータ・スキーターが店内に入ってきた。
オレンジ色の派手なコートはびしょ濡れだったが、わに革の派手なハンドバッグは濡れないように脇に挟んであった。