第31章 【待ち人】
……う~む、そうか。そうだったのか。
しかし3日目でここまで大威張りされるとは。1週間たったら祝儀を挙げてもおかしくない勢いだ。
いやその前に一応幼馴染として、何か気の利いたことを言わなくてなならないだろうか。
クリスが悩んでいると、ドラコがわずかに口を開いた。
「その……これは父上が決めたんだ。純血の家系は少ないからって……だから……」
「そうか、おめでとう」
おかしい、憎まれ口なら考えなくても沢山出てくるのに、正式に婚約した2人を前にして生憎これしか言葉が出てこなかった。
クリスは2人の脇をすり抜けて大広間に入ると、ロンとハーマイオニーを探した。
このホットなニュースを知らせようと辺りを見回すと、グリフィンドール席の真ん中辺りに、おなじみ燃えるような赤髪と、茶色いフワフワの髪の毛を見つけた。
「ロン、ハーマ――」
言いかけて、クリスは口を閉ざした。何故ならば2人の周りに、何か入り込めないオーラの様なものが見えたからだ。
それは先ほどのパンジーとドラコには見えなかった。ハリーとチョウの間にも見えない。でも、この2人には確かに存在している。
だがそれも一瞬で、2人がクリスに気づくと直ぐにオーラは周囲に溶けて消えてしまった。
「クリス、こっちよ!」
「ハリーに会った?談話室で宿題やってただろ?」
「ああ……うん……」
「どうしたの?元気ないわね」
「ん?そうか?きっと……寝不足なんだろ」
あくびをすると、涙で2人の笑顔がぼやけた。
談話室は十分温かいはずなのに、今日この時だけ少し寒く感じたクリスだった。