第31章 【待ち人】
「クリス、起きて!起きて頂戴っ!!」
「む~……あと5分……いや、1時間……」
「そんなに眠っていたら遅れるわ!!ほら、早く!!」
ホグズミード行きの朝、クリスは久しぶりにハーマイオニーに叩き起こされた。
重い瞼を無理やり開き、外を見ると大粒の雨が降っていた。寒いし、眠いしで、クリスの機嫌はあまり良いとは言えなかった。
「……ハーマイオニー、何で起こした?」
「それは貴女にやって貰いたいことがあるからです!とっても大事なことなの!!」
「大事?どういう意味だ?」
今日は確かハリーはチョウとデート、ロンは1日中クィディッチの練習があると言っていたから、実質2人きりのはずだ。
なにもこんな風に叩き起こさなくとも、ホグズミードで遊ぶ時間はまだ十分にある。
いったい何がそんなに大事なのか再び質問する前に、ハーマイオニーがまさかの発言をした。
「貴女とハリーに、リータ・スキーターに会ってもらうわ」」
「な――なんだって!?」
それまで寝ぼけていたクリスの頭に、いきなり雷が落ちが様な衝撃だった。
リータ・スキーターと言えば、昨年『三大魔法学校対抗試合』で、散々嘘と偽りだらけのでっち上げ記事を書いて騒動を巻き起こし、挙句の果てに自身が無登録のアニメ―ガスだと言う事が判明してハーマイオニーに取っ捕まった、トラブル・ライターである。
そのリータに会って、いったい何をしろと言うのだろうか。クリスは嫌な予感しかしなかった。
「まて、落ち着けハーマイオニー。リータなんて今更誰も必要としていないぞ」
「良いのよ、ちょっと名の売れた記者なら誰だって。読む人に対する、ちょっとしたきっかけになれば。まあ今回はリータが最適だと私が思っただけ」
「……いったい何を書かせるんだ?」
「それはホグズミードに行ったら説明するわ。さ、支度してちょうだい」
『S・P・E・W』と言い、ハーマイオニーが秘密裏に行動している時は、大抵大ごとになりかねない。
今回は果たして何が起こるのか、恐る恐る顔を洗って身支度を済ませると、朝ごはんも早々に大広間を出て、ホグズミード行きの馬車に乗せられた。