第31章 【待ち人】
それでも、クリスは今までの様に塞ぎ込むことはなかった。夜も比較的眠れるようになり(朝が弱いのは相変わらずだったが)1日の生活リズムも他の生徒と変わらないようになった。
ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人はそんなクリスを見て、何かを言うことが出来なかった。
クリスの調子が良くなると、今度はハリーの調子がおかしくなった。と、言うのも全てはスネイプとの『閉心術』の特訓の所為だ。
スネイプとの特訓は想像を絶するほど悪質なようで、ハリーは特訓から帰ってくると、いつも凄く疲れていて、山のような宿題を前にしても、教科書をパラパラ捲るだけで終わってしまい、早々にベッドへ入ってしまう。
「僕、もう無理。明日朝早く起きてからやるよ……」
この日のハリーも酷く疲れていて、教科書を数ページ開いただけで音をあげてしまった。
クリスは友人として何か出来る事はないかと思ったが、あっても宿題を写させてあげることくらいで、根本的な解決には至らない。
ハリー曰く『閉心術』の特訓の後は、いつも『神秘部』に続く廊下の夢を見るらしい。そしてその後は決まって傷が痛むのだそうだ。
ハリーは初め、それはスネイプの所為だと言っていた。スネイプが本気でハリーを助けようとしておらず、ヴォルデモートの為に無理やり心を開こうとしているんじゃないかと邪推した。
もちろんその後、ハーマイオニーが論破したが、未だロンとハリーは「スネイプ・スパイ疑惑」を信じている。
クリスはどっちもどっちだと思っていたが、『閉心術』の特訓がハリーを苦しめているという事実は確かだと思っていた。
翌朝、クリスが談話室に降りていくと、大広間から取ってきたのだろうトーストを片手に、ハリーが必死に羽ペンを走らせている姿を見つけた。
「お早う、ハリー。朝から頑張ってるな」
「うん……お早うクリス」
何時からここで頑張っていたんだろう、ハリーの目は3分の1くらい閉じていた。
この調子では1限目は寝て過ごす可能性もある。吠えメール程でなくていいから、何か良い刺激があれば良いのだが……。
そう思ってあたりを見回すと、ふと掲示板に目が止まった。そこには今週末にホグズミード行きのお知らせが載っていた。