第31章 【待ち人】
傍で一瞬ハーマイオニーが息を飲むのが分かった。クリスとハーマイオニーは餌をやるふりをしながら、皆と少し距離を置き、小声で話し始めた。
「どういうこと?だって貴女はお父様が亡くなった瞬間を見たんでしょう?」
「私が見たのは、身代わりになって倒れた姿だけだ。これは仮説だが、もしかしたら父様は死んだのではなく気を失っただけで、ヴォルデモートの指示で何処かに監禁されているのかもしれない」
クリスが声をひそめながら、尚且つ期待を込めてそう言うと、ハーマイオニーは顎に手を当てて考え込んだ。
その顔は神妙で、あまり明るい表情ではなかった。
「……私だけでは判断できないわ、その場にいなかったもの。ハリーにも訊いてみないと」
「そうだな。ハ――」
「待って!今ここで話すべきではないわ。後で談話室に……いえ、必要の部屋で話しましょう」
「ああ、分かった」
それからクリスは見えないセストラルに対し、当てずっぽうに地面に生肉を放りながら、今すぐ話し合いたいのをひたすら我慢した。
やっと餌を全てやり終えると、森を抜けて、4人はハグリッドと小屋の前で別れた。
クリスは猛吹雪の中ハリー、ロン、ハーマイオニーを強引にせっついて、いつもDAの会合で使う必要の部屋まで半ば無理やり引っ張っていった。
* * *
「――と、言う訳なんだ!どう思う、ハリー?」
部屋に入るとクリスは早速、自分がセストラルが見えない事実と、父が生きているかもしれない可能性の話しをした。
しかしハーマイオニー同様、その話しを聞いたハリーもロンも眉根を寄せた。
「クリス、言い辛いんだけど、その可能性は低いと思うよ」
「そうだよ。万が一その場では生き残ったとしても、『例のあの人』が君のパパを生かしておく理由がないじゃんか」
「それは……餌かもしれない、私を配下に置くための。実際にヴォルデモートは父様に対して、母様を人質にとって似たような事をやらせた例もある」
そうだ、きっとそうだ――。
クリスはその言葉を誰よりも自分に言い聞かせた。そうすることで、クリスは妙なやる気を取り戻し、授業中の簡単な呪文のおさらいも、DAの会合中も、今までにない集中力を見せた。
だが何が邪魔をしているのか、クリスの魔力は一向に戻らなかった。