第31章 【待ち人】
「てっ、停職!!?」
「シー!クリス、声が大きい」
ハリー達が「魔法生物飼育学」の授業から帰って来るや否や、あの糞ガマガエルの所為でハグリッドが停職になったことを聞かされた。
曰く、アンブリッジの査察であまり良い成果が出せなかったらしい。
まあ少し考えてみれば、危険なドラゴンや巨大蜘蛛などを愛するハグリッドが先生なのだから、授業も教科書通りでないことは予想がつく。
だからといって、あんなに一生懸命なハグリッドが停職とは聞き捨てならない。
「あの糞ガマガエル、本当に一度絞め殺してやろうか……」
「ついでに言うと、トレローニー先生も停職だって」
「ああ、それは至極どうでもいい。――そうだ、今からハグリッドの所に行かないか?きっと落ち込んでいるだろうから」
「賛成だわ、皆で行きましょう」
外は猛吹雪でろくに前が見えず、強風に何度か吹き飛ばされそうになりながらも、4人はなんとかハグリッドの小屋にたどり着いた。
ノックをすると、ファングの嬉しそうな鳴き声が聞こえてくる。間もなくして、どんよりとした空気をまとったハグリッドが戸口に現れた。
相変わらず身体の至る所に傷をつくり、見るからに痛そうだ。
「よう、お前ぇさんたちか。ちょうど良い、セストラルに餌をやらなきゃいけねぇから、歩きながら話そう」
「セ……セスト……なんだって?」
「セストラルよ。ほら、前に話したじゃない。死を見た者しかその姿を見る事が出来ない、極めて貴重な生物よ」
ハーマイオニーお得意の教科書を丸暗記したような解説を聞き、クリスは微妙な顔をした。
そんな話し、前に聞いたような聞いてないような……。とにかくそのセストラルがいる禁じられた森へと歩きながら、停職後、ハグリッドがどうなるのかを4人で話した。
「……うん、まあ……しばらくは『O・W・L』の試験に出るような大人しいヤツをやるつもりだ。んで、そのあとは……」
それだけ言うと、髭をもごもご動かし言葉をつまらせた。
停職と聞いて、誰よりもショックを受けたのはハグリッド自身だ。4人はかける言葉も見付からず、時々思い出したように当たり障りのない話題を振りながら、森の中を歩いた。