第30章 【心の拠り所】
その日の会合は、基本的にはこれまでの復習に費やされた。
皆休み明けとは思えないほど、術に冴えがあったが、中でもネビルの急成長は目を見張るものがあった。
きっと、両親の仇が脱獄したニュースがネビルの集中力を高めていたのだろう。
会合中、ネビルは無駄話を一切せず、ただひたすら練習に没頭していた。その成果もあって、メンバーの中でハーマイオニーに呪いをかけることに成功したのは、ネビル1人だけだった。
だがネビルは、嬉しそうな顔一つしなかった。そんなネビルを見て、クリスはふとバーニー先生の優しい顔を思い出した。
なぜ先生は、奥さんを殺されていながらあんなに幸せそうに生きて行けるのだろう。
自分とはまるで違う……。クリスは顔を伏せ、物思いにふけった。
「……どうしたの、クリス?」
クリスが下を向いていると、ハリーが心配そうに話しかけてきた。
クリスは慌てて笑顔を取り繕ったが、考えてみればハリーなんて両親をヴォルデモートに殺されているのだ。その上、今でもヴォルデモートに命を狙われている。
だが自分の様に塞ぎ込んでいた事などない。それどころか、こうして対抗組織を作ったりして、いつでも前を見ている。
その勇敢に輝くエメラルド・グリーンの光を見て、クリスはぐっとこぶしを握った。
「ハリー、見ていてくれ。私も……もっと頑張るから」
「ん?うん、応援してるよ」
自分と同じ、いや、自分よりも酷い運命に逢ったハリーがこんなに凛と立ち向かっているのだ。
こんなところで挫けてはだめだ。もっと強く、もっと逞しくならなくては――。クリスはブレスレットの上から、左手首を強く握った。