第29章 【変化】
翌朝は、7人もの子供たちが一斉にホグワーツに戻るので、てんやわんやだった。
やれ靴下が片っぽ無いだとか、羽ペンがどこかに消えたとか、誰のか分からない教科書が紛れ込んでいるとかで、ゆっくり話しもできなかった。
ホグワーツまでは『夜の騎士バス』で行くことになった。ウィーズリーおじさんとおばさんや、ルーピン先生達など休暇中お世話になった皆にお別れの挨拶をしていると、それまで拗ねて部屋に閉じこもっていたシリウスがやっと出てきて、名残惜しそうに皆と挨拶をした。
「寂しくなったら、あのぬいぐるみを私だと思ってくれ」
「シリウスは独りで寂しくてもまともな食事をしてくれ」
「君に言われたくない」
お互い苦笑しながら、クリスはシリウスとハグをした。最後にシリウスがクリスの頭にキスをすると、丁度『夜の騎士バス』が来たので、クリスは慌ててシリウスと離れた。
痩せてニキビ面の車掌が荷物を次々と乗せている間に、クリス達一行は『夜の騎士バス』に乗り込んだ。
『夜の騎士バス』は3階建てで、クリスとハーマイオニーは奥の座席に座った。そしてさあ出発、と言う間際にハーマイオニーが不穏な事を言った。
「ねえ、貴女……シリウスと何があったの?」
「えっ……?」
クリスが反射的に聞き返した瞬間、バスがバーンッ!とものすごい音を立てて猛スピードで発車した。その勢いたるや最前列に座っていたフレッドとジョージが、慣性の法則で後部座席まで吹き飛ばされるほどだった。
バスは歩道だろうが反対車線だろうが縦横無尽に走り、信号も何もあったもんじゃない。
とにかく猛スピードで動く、揺れる、ひっくり返るで、やっとこさホグワーツの校門前につく頃には、とてもじゃないが話しをする気力なんて残っていなかった。
苦労してトランクを部屋まで運び、その日はシャワーを浴びてベッドに入るとすぐに寝てしまった。