第29章 【変化】
「忘れるなポッター、月曜の夕方6時だ」
それだけを言い残すと、スネイプは玄関の扉を開けて姿を消した。と、同時にルーピン先生がシリウスの傍に向かい、いったい何があったのか質問した。
ロンはハリーを助け起こすと、クリスとハーマイオニーを交えてルーピン先生と同じ質問をした。
「何があったんだ?」
「スネイプの奴が挑発してきたんだよ、シリウスを臆病者呼ばわりしたんだ」
「だからって、普通杖を突きつける!?」
「普通じゃない、よく考えて。相手はスネイプだ」
ハーマイオニーの非難するような声に、ハリーが「僕でもそうしたかもしれない」と言いたげなニュアンスを含めて言い返した。
それも踏まえ、仮にもし自分がスネイプのあの嫌味な口調で挑発されたら――と言うのを想像して、ロンとクリスは100%シリウスが悪いとも言えないんじゃないかと思ってしまったのだった。
その日の夕食はウィーズリーおじさんの快気祝いとして、ウィーズリーおばさんが腕を振るってご馳走を沢山作ってくれた。
マンダンガスとムーディ先生も立ち寄って、久々に食堂は大盛り上がりだった。それに輪をかける様に、双子のフレッドとジョージがおどけてバカ騒ぎを始めていると、ふとハリーが小さく手招きをして食堂から出るよう合図した。
クリスは隙をうかがい、そっと食堂から出た。するとそこにロンとハーマイオニーもいた。
「どうした、ハリー?」
「僕、閉心術って言うのをスネイプから習うように言われたんだ」
「閉心術?」
「知らないの?『魔法深層解明術全集』とか『真理追究文書』とかに載ってる――」
「あー!もう、小難しい話しはいいよ。で?それを習うとどうなるの?」
「簡単よ、心を封じる事が出来るの――そうだわっ!きっとダンブルドアはハリーがヴォルデモートの夢を見ないようにするために、この術を習わせるんだわ!」
「なんでわざわざスネイプから?」
「それは、私には分からないけど……」
とにかくそれ以上話し込んでも怪しまれるだけなので、この話しはここで切り上げることになった。