第29章 【変化】
翌日から早速授業が始まった。例え休み明けでも『O・W・Ⅼ』 対策の授業は容赦なく生徒達を苦しめ、1日が終わる頃には生徒達の顔から生気が抜けていた。
「あー……テストって何の役に立つんだ?」
「あら、この『O・W・Ⅼ』って進路にとても重要なのよ。場合によってはこのテストで進路が決められちゃうんだから。悔いを残さない為にも全力で取り組まなきゃ」
「流石、監督生様は言う事が違う」
「それ僕への嫌味も含んでる?」
そんな事を言い合いながら廊下を歩いていると、背後からハリーを呼ぶ声がした。と言ってもDAメンバーの殆んどが「次の会合はいつだ?」と聞きに来ているのだ。
きっとまたDAメンバーだろうと思い振り返ると、そこにはチョウ・チャンが小首をかしげ微笑みながら立っていた。
「ハリー、休暇はどうだった?」
「あー……うん。まあまあ」
「私達、談話室に行ってるわ」
ハーマイオニーに小脇をつつかれ、クリスもそれに従った。
頭ではハリーの恋路を応援しなきゃいけないと分かっていても、感情がそれに追いつかない。どうしても、チョウの笑顔を見る度、セドリックの事が頭をよぎる。
談話室に戻り、クリスが不機嫌そうに宿題を片付けていると、ハーマイオニーがたしなめる様な溜息を洩らした。
「はぁ……ねえ、クリス?」
「分かってる。ハリーを応援しろ、だろ?」
「無理に応援しろ、なんて言わないわよ。ただ……人は時間の流れの中で生きているものよ。時が経てば、別の誰かを好きになってもおかしくないわ」
「ハッ、そんなもんですかね」
そんな恋は、恋とは呼ばない。クリスが小馬鹿にしたように鼻で笑うと、ハーマイオニーの表情が厳しくなった。
「あら、それじゃあこの休暇中、シリウスと一番親しくしていたのはどこの誰かしら?」
「……どういう意味だ?」
「別に。ただ私はチョウばかりを責めるのは筋違いだって言いたいだけよ」
そう言うと、ハーマイオニーは再び宿題に戻った。その隣で、ロンがサッパリ訳が分からないと言う顔をしている。
クリスは何か言い返したくても、上手く言葉が出てこず、胃がムカムカしてきた。
そんなクリスの鬱憤に輪をかける様に、談話室に戻ってきたハリーの鼻の下がだらしなく伸びていたのを見て、クリスはますます不機嫌になるのだった。