第29章 【変化】
「いったいスネイプが何の用だよ!!」
「何でハリーだけ!?もしかして騎士団が係わってるのか!?」
「もうすぐ学校が始まるのにわざわざ呼び出し!?」
扉が閉まると同時に、皆がわっと堰を切ったように話し始めた。
謎が謎を呼び、部屋の中は一時混乱状態に陥ったが、再び扉が叩かれると子供達は一斉に口を閉ざし、耳をそばだてて振りかえった。
「良いニュースを持ってきたよ、皆。下に降りてきてくれるかな?」
いつものよれよれのローブを着たルーピン先生が、なんだか3割増しで輝いて見えるほど先生は嬉しそうな表情を浮かべていた。
スネイプからの呼び出しで意気消沈しているハリーには悪いが、良いニュースと聞いてはジッとしていられない。それでなくともここ最近良いニュースなんてありつけてないのだ。
勢いよく部屋を飛び出すと、階段の上から、パジャマの上にコートを羽織ったウィーズリーおじさんの姿が確認できた。
感激のあまり、フレッドとジョージ、ロン、ジニーは滑るように階段を駆け下りると、勢いよくおじさんに抱きついた。
「パパー!」
「おかえりパパ!」
「ただいま!本当はもっと驚かせようと思ったんだがね」
「ねえパパ、怪我はもう良いの?」
「ああ、もうすっかり良くなったよ!あれ?ハリーはどうしたんだい?」
子供たちの中にハリーだけいない事に、ウィーズリーおじさんはすぐに気づいた。
クリスとハーマイオニーは理由あり気に食堂の扉に目をやりつつも、なんて答えようか考えあぐねた。
するとおじさんは了解したように2、3回頷き、そろそろと足音を立てない様に食堂の扉に近づくと、勢いよく扉を開けた。
「はーっはっはっは!治ったーー!!全快だーーー!!」
両手でガッツポーズをとるウィーズリーおじさんの隙間から、互いに杖を突きつけ合うスネイプとシリウスの姿が見えた。
正に一触即発と言う雰囲気を感じて、おじさんは勿論その場に居た全員が固まった。
「あ……あ、あぁ~。いったい何事だ?」
ちょっと間の抜けたおじさんの声を聞くと、ハリーは緊張の糸が切れた様にへなへなとその場に座りこんだ。
スネイプはサッと杖をローブの内ポケットにしまい、固まっている皆を通り越し玄関へ移動した。