第3章 【ハリーの怒り】
「――と、言うわけさ。だからハリー、パパやママの前でパーシーの話題は出さないでくれよ」
「分かったけど……そもそも何でパーシーが昇進させられたの?」
「鈍いなハリー。ファッジはダンブルドアと繋がっている人間を探るために、手ごまを増やしたかったのさ。ま、いうなればスパイだな」
「魔法省は『例のあの人』の復活を認めていない。だからダンブルドアが不死鳥の騎士団を立ち上げて『例のあの人』が復活したと言いまわって、あれこれ動き回っているのが邪魔でしょうがないのさ。もちろんハリー、君もね」
「ぼ……僕?」
「魔法省は君も目の敵にしているんだよ。君はヴォルデモートの復活を目の当たりにした上に、2度も生き延びた。最近じゃ新聞も、ダンブルドアと君を妄想癖の目立ちたがり屋だと書いてる」
それを聞いたハリーは、頭が混乱しているみたいに額に手を当てて黙り込んだ。クリスにはそんなハリーの気持ちが、痛いほど分かった。
あの日、実際にヴォルデモートが復活したのを知り、大切な人を犠牲にようやく命からがら魔の手から逃れたのに、親しい人の家族から厄介者扱いされ、挙句の果てに嘘つき呼ばわりだ。
不幸中の幸いか、クリスはハリーほど有名ではなかったので、たまたま新聞に載らなかったに過ぎない。
だが父の死は勿論、セドリックの死さえ新聞に載らなかったのには流石に怒りを覚えた。
いったい、何故、何の為にセドリックが死んだのか―――セドリックの尊い死を無下にするのはとても許せるものではなかった。
「あ、ヤベッ!」
階段を上って来る足音が聞こえてくると、双子は『姿くらまし』をしてその場から居なくなった。次の瞬間、ウィーズリーおばさんが笑顔で部屋に入って来た。
「あら皆、お集りのようね。もうすぐ夕食になるわ、すぐに下りていらっしゃい。それとハリー、ロビーでは静かにね」
「どうして?」
「起こしたくない人がいるのよ」