第3章 【ハリーの怒り】
「どういう事です?父さん」
「とぼけるな!私はファッジに直接言われたんだ!ダンブルドアと繋がっている者は机を片付けて即刻部署を出て行くようにと!お前の上司はまさか――」
「そうですよ、僕の上司はファッジ大臣です。僕は大臣直々に大臣室勤務の大臣付き下級補佐官に任命されました」
大得意な顔でそう言ったパーシーに、誰も何も言えることが無かった。家族ではないクリスですら、こんな事はあってはならないと思っているのに、それが血の繋がった家族なら衝撃もひとしおだろう。
アーサーは下を向いたまま握りこぶしを固めると、パーシーの頬を思いっきり殴った。パーシーはよろめき、モリーが咄嗟にパーシーを支えた。
「アーサー、何も殴る事――」
「お前はっ!お前は恥ずかしくないのか!?ウィーズリー家の人間として……権力にまみれ自分を見失うなんて!!私はお前をそんなふうに育てた覚えはないっ!!」
「僕だって父さんの子供になんて生まれたくなかった!!」
その瞬間、クリスを含めウィーズリー家全員に衝撃が走った。
嘘だ――だってウィーズリー家といえば、喧嘩こそすれど、みんな本当に仲が良くて、羨ましいくらい家族を大事にしている憧れの一家だ。それなのにこんな事――。
パーシーはモリーの手を振り払うと、アーサーに向かって大真面目な顔をして凄んだ。
「僕は父さんの子供としていつも恥ずかしかった。家は貧乏で、父さんは魔法省の役人と言えど小さな目立たない部署で雑用を押し付けられセコセコ働いて。僕はもっと偉くて立派な、誰もがうらやむ人間になりたい!」
「――……行け」
「何ですって?」
「この家から出て行け!お前はもう息子でも何でもない!赤の他人だ!!」
「アーサー!!」
「止めるなモリー!『例のあの人』が復活して、大変なこの時に、欲に目がくらんでダンブルドアと敵対するような大馬鹿者などこの家には必要ない!!」
「ええ、そうさせて貰いますよ!」
パーシーは大股でリビングを横切ると、大きく足音を立てて階段を上って行ってしまった。
残されたフレッドとジョージ、ロン、ジニー、そしてクリスは何も言えず、ただ黙っていた。
モリーはエプロンに顔を埋めて泣き出し、アーサーは乱暴に椅子に座ると苛立ちながら机を叩いた。美味しい料理は焼けこげ、楽しい夕食の時間は最悪の結末を迎えた――。