第24章 【Love ∞ destiny】
「チョウに迫られたの?」
「えっと――」
「チョウとキスしたの?」
ハーマイオニーの隙を見せない2段構えに、茫然としていたハリーも、頷くことで何があったのか示した。
ロンは「Yes!!」と言ってガッツポーズをしてみせ、好奇心満々といった顔で、途中だった宿題を放り投げて詳細を聞きたがった。
「それでそれで?どうだった?」
「どうっ……て」
「だぁー、もう!柔らかかったとか、気持ちよかったとかあるだろう!?」
「ん~……濡れてた」
思いもかけない返答に、ロンは冷やかしとは違う微妙な声を口の端から漏らした。
ハーマイオニーはじれったそうなイライラした様子で、編んでいた毛糸の帽子を膝の上に置いた。ハリーはそれを見て慌てて付け加えた。
「違う、変な意味じゃないよ。泣いていたんだ」
「泣いてた?うれし泣き?それとも君って泣くほどキスが下手なの?」
「分かんない、初めてだったし。でも、一応は好きだって言ってくれて……」
嬉しそうにはにかむハリーを見て、クリスはどうしようもない怒りを覚えた。
チョウと言えば、半年前まではセドリックの彼女だったはずだ。廊下でも恥ずかしげもなく手を繋いていた2人を見た事もある。ダンスパーティにはパートナーとして2人仲睦まじく踊っていたではないか。
それなのに、セドリックが死んでまだ半年しか経っていないのに、ハリーに宗旨替えとは尻軽にもほどがある。クリスは苛立ちのあまり「チッ」と舌打ちした。
「下らない、私は部屋に戻るぞ。また明日」
それだけを言い残して、クリスは女子寮への階段を上って部屋に戻った。部屋では既にパーバティとラベンダーがすやすや寝息を立てている。
クリスは自分のベッドに身を投げた。言葉にならない思いがあふれ出てきそうになるのを、必死に止める。
(なあ……セドリック、貴方はこんな事を望んでいたのか?)
決して出ることのない答えに、感情が翻弄される。体の中をドロドロした黒い感情が蹂躙し、理性が保てなくなってゆく。
いっそこのまま発狂出来たら良かった。そうすれば考えなくてはいけない問題全てが解決するのに。
耐えがたい苦痛にクリスは目をつぶり、ベッドのシーツをギュッと握りしめた。