第24章 【Love ∞ destiny】
「皆、とても上達した!休暇が明けたらもっと凄い術をやろうと思う」
「守護霊とか!?」
「パトローナスか、良いね。じゃあ休暇明けはそれをやろう」
皆が一斉に「わあっ!」と喜びの声を上げた。ただ独り、クリスを除いて。クリスはその輪の中にいづらくて早めに『必要の部屋』から出て行った。
時刻はまだ9時前、ギリギリだが生徒が出歩いても良い時間だ。クリスは休暇用に本をまとめ借りしようと、そのまま談話室には戻らず図書館に寄った。
司書のピンス先生に「こんな時間に来るな」と言わんばかりの鋭い視線をものともせず、大量の本を借りると図書館を後にした。
ちょっと調子に乗って本を借りすぎたと後悔しながら廊下を歩いていると、曲がり角で急に飛び出してきた人とぶつかってしまい、クリスはその衝撃で床に尻もちをついた。
「痛たた……」
「――クリス?」
この声は、忘れようとしても忘れられない。不意に聞こえた懐かしい声に、クリスは思わず固まった。
ゆっくり目線だけ上げると、そこにはクィディッチの練習の帰りなのか、ユニフォーム姿のドラコが、ブルーグレイの瞳でこちらを見つめていた。
「久しぶり……だな」
「……そうか?」
「……何か言いたい事はないのか?」
「あ、ああ……ぶつかって悪かったな」
「――っ!そうじゃないだろ!!」
ドラコは乱暴にクリスの手をグイっと力いっぱい引っ張ると、本を踏みつけるのも構わずクリスの背中に片腕を回した。微かに香る嗅ぎなれたコロンと汗の匂いに、懐かしさで胸がいっぱいになる。
「クリス、確かに僕の父上達がした事は取り返しのつかない事だ。だからと言って君まで――」
「放してくれ、ドラコ」
「君まで“そちら側”にいってどうする!?死ぬだけだぞ!」
「頼む、放してくれドラコ……」
「それとも忘れたのか!?父上の事も、母上の事も、僕の事もっ!!」
「放せっ!ドラコ!!」
声を聞いているだけで目頭が熱くなり、クリスは満身の力をドラコを突き放すと、グリフィンドール寮まで全速力で駆け抜けた。