• テキストサイズ

ハリー・ポッターと沈黙の天使

第24章 【Love ∞ destiny】


 どうしてもチャンドラーの事が気になる。あの主命の為なら命をも投げ出す屋敷しもべが、手紙1つ返さないのが気になって仕方がない。
 訳あり顔のクリスを見て、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が困ったような表情を浮かべた。

「あの……クリス、分かっていると思うけど、貴女のお父様は――」
「そうじゃない!私が心配しているのは、実家に残した屋敷しもべだ」
「なおさら危ないよ!『死喰い人』が人質にして待ち構えているかもしれないんだぜ!?」
「それも分かってる。だけど……」
「クリス――」

 俯くクリスに、ハリーが優しい声でそっと呟いた。

「手紙でウィーズリーおじさんに相談してみよう?もしかしたら、護衛付きだけど屋敷に帰してもらえるかもしれないよ」

 こういう時、「護衛付き」という現実を突きつけながら夢を見させる様なハリーの優しさが痛かった。
 しかしここで納得しなければ、ただの我儘になる。クリスは胸に引っかかるものを感じながら、頷くしかなかった。


 12月も中旬に差し掛かったが、クリスの魔力は依然として回復傾向には見られなかった。
 杖を使う授業ではいつも簡単な魔法の練習をし、月に一度の病院にも1度も文句を言わず通った。にもかかわらず、何の成果も得られなかった。
 バーニー先生は「焦らない事が大切だ」と尤もらしい事を言っていたが、魔法学校という集団生活の中で、魔法が使えないという苦境に立たされたクリスの苦しみなど、誰にも分って貰えなかった。

 そしてその内、クリスは開き直って授業以外では魔法の練習をしなくなった。
 しなくても杖を使わない授業では良い成績を修めていたし、もし魔法が使えない事を『死喰い人』達が知ったら、狙われる事もなくなると考えたからだ。

 それに比例するように、クリスの読書量が半端なく増えていった。
 趣味の“人生の役に立たなさそうな本”は勿論、『魔法薬学』や『天体学』等の好きな授業に関する本を、図書館の棚の片っ端から読み漁っていった。
/ 363ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp