第23章 【帰ってきたハグリッド】
「当然ご存じでしょうけど、学校はもう2カ月も前に始まっています。それなのに彼方は他の先生方にも行方を知らせずどこかへ行ったきり。いったいどこへ行ってなさったの?」
「俺は――いや、俺が休んだのは……け、健康上の理由ですだ」
「あら、健康上?」
アンブリッジは嘗め回すように、ハグリッドの頭のてっぺんからつま先まで眺めた。
ハグリッドは落ち着かない様子で愛想笑いをして誤魔化そうとしていたが、それに対しアンブリッジは冷たい笑みを浮かべていた。
「そうですか。まあ、彼方が遅れたことは高等尋問官として大臣に報告させて頂きます。それでは、また査察の時にお会いしましょう」
バタンと扉が閉まり、アンブリッジが小屋から十分離れたことをハグリッドが窓から確認してから、4人は大きなため息とともにマントを脱いだ。あまりの緊張に、まだ胸がドキドキしている。
査察が行われたら、ハグリッドはどうなってしまうのだろう。もしトレローニー先生と同じ目に遭えば停職――いや、もっと悪ければ教師を辞めさせられる可能性だってある。
4人を代表し、ハーマイオニーが切羽詰まった顔で尋ねた。
「ねえハグリッド、授業でどんな事を教えるの!?」
「おお、任せておけ!面白い計画をたんと立ててある」
「面白いって、具体的にどう面白いの?」
「そいつは言えねぇ。当日のお楽しみだ」
クリスはハグリッドの『魔法生物飼育学』を取っていないから詳しくは知らないが、ドラゴン大好き、大蜘蛛大好き、危険な生き物大好きなハグリッドの事だ。絶対に教科書通りの授業なんてやるはずがない。
ハグリッドの自信満々の顔を見て、一生懸命授業内容を一般的なものに切り替えるよう説得するハーマイオニー達をしり目に、内心独り早くもハグリッドの転職先を考えてしまうクリスなのであった。