第23章 【帰ってきたハグリッド】
聞いたこともない役職に、ハグリッドは情けない声を出した。アンブリッジはそれとは対照に、小さい体を大きくそって偉そうにハグリッドに対抗してみせた。
「そうです。魔法省の役人として、ホグワーツの教師の皆様を査察しているんです。後日彼方の授業も拝見させて頂きますわ。ところで――」
アンブリッジはきょろきょろ辺りを見回し、時々目に見えない何かを探すように腕を突き出して歩き回りながら喋った。
「ここには彼方お1人?」
「そりゃ、どういう意味ですかい?」
「城から彼方の小屋まで、4人分の足跡がありました」
ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人の肩が一瞬ビクッとなった。
頼むから、どうかハグリッドが余計なことを言いませんように……。クリスは目をつぶって胸の前で強く手を握って祈った。隣ではハーマイオニーが同じような姿勢を取っている。
「う~ん、えっと……さあ?俺は今帰って来たばかりだから、なんとも……。俺が帰る前に誰かが寄ったんじゃないですかね?」
「彼方の小屋から城に帰る足跡はありませんでしたけど?」
絶体絶命――クリスは息をするのも忘れて、ハグリッドが機転を利かせてくれるよう、ただひたすらに祈った。
ハグリッドが「あー」だの「うー」だの言いながら4人の方をチラチラ見るので、クリスは気が気じゃなかった。
アンブリッジはせわしなく辺りを動き回り、ベッドの下や戸棚を覗いていたが、ハグリッドとファング以外、他の誰の姿も見えないと分かると再びハグリッドに向かい直った。
「ところで彼方、どうしてそんな大怪我をなさったの?」
「へっ!?俺ですかい!?俺は――その……なんだ、その、転んだ……そう、転んだんでさあ!そりゃあ痛かったとも。なんせでっかい大岩に――」
「大岩?彼方、山にでも行っていたの?」
知っているのか、それとも知らないのか。どちらにせよクリスはアンブリッジの「山」という一言を耳にして嫌な汗をかいた。
ハグリッドはまた、しどろもどろと言い訳を探していたが、良い言い訳をする前にアンブリッジがさらに突っ込んできた。