第23章 【帰ってきたハグリッド】
「『死喰い人』だね!?」
「ああ、だから俺たちは慎重に慎重を重ねて事を運んだ。じっくり、時間をかけて……だが、それも数日後無駄になった」
「どういう事?」
「ある日、俺たちが貢物を持っていったらガ―グが殺されて、新しい奴がガ―グにおさまっていた。連中は殺し合いが好きだから、こんな事も珍しい事じゃねえが……不味い事に、新しいガ―グの所には既に『死喰い人』が貢物を持って行ってた」
「そんなあっ!!」
ロンが絶望を交じえた声を上げた。と、同時に『死喰い人』と聞いて、クリスの心臓も跳ね上がった。
不安そうに、だけど続きを聞きたくてドキドキしているクリス達の顔を見て、ハグリッドの髭がピクピク動いていた。
話す事を渋っていた最初の印象はもうどこにもない。むしろクリス達の反応をみて楽しんでさえいる。
「いやあ、俺も最初のガ―グと接触して1週間もしない内に、新しいガ―グに代わるなんて思ってもみなかった。でも俺たちは引き返す事なんて出来ない。俺たちは覚悟を決め、新しいガ―グの元へ参じた。しかし行ってみて分かった、こりゃあダメだと。新しいガ―グは、前のガ―グに送ったゴブリン製の兜をかぶって俺達の事をニヤニヤ笑いながら待っとった」
「それで?それからどうしたの?」
「どうしたもこうしたも、同じようにやるだけだ。新しいガ―グの元に、頭を下げて贈り物を掲げながら前に出てこう言った。『お近づきの証として、ガ―グ様への贈り物を届けに――』その瞬間、俺は足を掴んで逆さづりにされとった」
普通の巨人はだいたい5、6メートルはあると授業で習った。こうして直に見るハグリッドでさえ十分大きいのに、そのハグリッドを逆さづりにするくらい大きいなんて、想像するだけでも脅威だった。
もしその巨人がヴォルデモートの下に就くとしたら、普通の人間でなくともひとたまりもないだろう。
「それで、どうやって逃れたの?」
「オリンペが素早く杖を取り出して、俺をつかんでいた奴に結膜炎の呪いをかけてくれた。そうしてくれなきゃ、俺は今ここにいねえ。だが問題はここからだった。命からがら逃れたけんど、もうガ―グ達の前に顔を見せるわけにはいかねえ。それで俺たちは別の手段を取った」