第3章 【ハリーの怒り】
クリスはハリーの腰に抱きつきながら、1か月間ハリーがどんな苦労をしたのかを想像して、胃がギュッと締め付けられるような気分がした。
するとハリーにもクリスの気持ちが伝わったのか、ハリーの苛立ちが風船のようにしぼんでいった。
「……そうだよね、僕だけが苦労したわけじゃないんだ……。ごめん、怒鳴ったりして」
「いいさ、ハリーが不満に思うのは当たり前だから」
「そうよ、気にしないで」
「ヒューヒュー、お熱いねえお2人さん」
「オンリーロンリーな僕らに見せつけようってのかい?」
突然冷やかす声がすると思ったら、パチンッ、と弾ける音と共にフレッドとジョージが姿を見せた。
ハリーは勿論、クリスも殆ど部屋に籠りっぱなしだったので、2人を見るのは久しぶりだ。相変らずそばかすの数まで瓜二つで、見分ける事はかなり難しい。
「2人とも、『姿現し』の試験に受かったんだね」
「おうともさ!楽勝だったぜ」
「それよりお2人さん、いつまで抱き合ってるつもりだ?いい加減離れても良いんじゃないかな?」
フレッドに指摘されて、自分達がいかに恥ずかしい事をしているのか、やっと理解したハリーとクリスはパッと手を離した。その様子を双子がニヤニヤ見ていた。
「ハリー、不満をぶちまけるのは構わないんだけどさ、もう少し大人しくして頂けませんかね」
「君の甘~い囁きのお蔭で、『伸び耳』の調子がおかしくてさ。会議の様子が聞こえないんだ」
「の、伸び……?」
「『伸び耳』新しく開発したんだ。これで会議の様子を探れる」
ジョージが得意げに1本の長い紐を掲げて見せた。よく見るとそれは部屋の外まで繋がっている。
ハリーとクリスが不思議そうな顔をしていると、フレッドが説明してくれた。
「ママが俺達を会議に入れてくれないんだよ。だからこうしてこっそり様子を伺っているって言うわけ」