第21章 【DA】
確かにハリーの言うとおりだ。こんな時通信の手段がないというのはなんとも歯がゆい。
良い案が出ないまま、4人の間に沈黙が走る。そうして時間だけが過ぎていき、やがて悩んでいても仕方がないと思い、クリスとハーマイオニーは女子寮へ戻っていった。
ハリーとロンはまだ宿題が残っているからと、談話室に残った。
クリスはベッドに潜り込みながら、どうしてハリーの傷だけ痛んで、自分の『闇の印』は痛まないのか考えていた。
やはり左腕に着けている、このダンブルドア特注の腕輪のおかげなのだろうか。それとも、魔力を失くしたことと関係があるのだろうか。
「こんな時、誰かに相談出来たらなあ……」
ルーピン先生やシリウスの顔が浮かんだが、簡単に手紙すら送れない状況では無理がある。ほかに頼れる大人――と、考えた時、不意に父であったクラウスの顔が浮かんだ。
その瞬間、クリスは心臓を鷲掴みにされたような気分がして、毛布を頭まですっぽり被ると、そのまま朝まで必死に涙をこらえて過ごした。
翌朝の天気は、昨日に引き続き土砂降りの天気だった。もうクリスの徹夜明けのひどい顔について、誰も何も言わなくなっていた。
クリスはその方がありがたかった。毎晩誰かが死ぬ夢を見たり、墓場での惨劇を思い出して不眠症になっているなんて、いちいち説明する気も失せていた。
朝食の時大広間で、クリスがいつも通り砂糖たっぷりのミルクティーを嗜んでいると、ハリーがこっそり耳打ちしてきた。
「例の会合だけど、良い場所を見つけたんだ。もちろん君も来るだろう?」
「行って良いならな」
「もちろんだよ!じゃあ、今日の8時だから!」
ハリーはどこかウキウキしていた。初めは何故だか分からなかったが、マッシュポテトを食べながらハリーがレイブンクローのテーブルをチラチラ見ているので、クリスはピンときた。
そしてクリスの感通り、朝食の時間が終わる10分前に、ハリーはレイブンクローのテーブルに近づき、チョウ・チャンとその友達に話しかけに行った。