第21章 【DA】
「気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど、昨日スナッフルと話して、私一晩考えてみたの。その……スナッフルが賛成しているってことは、もしかしたら間違っているかもしれないって――」
「つまり、君はスナッフルの事を全く信用していないってことだね!?」
「全くとまでは言ってないわ。でも、思い出してみて。夏休みにグリモールド・プレイスに移ってから、スナッフルってちょっと……向こう見ずなったと言うか、冷静な判断力を失ったと思わない?」
冷静な判断力を失ったかどうかはさて置き、確かに夏休み中のシリウスはちょっとおかしかった。15歳の少女の部屋に、夜な夜な添い寝に訪れたのがそのいい証拠だ。
だがそれだけで、シリウスの考えが間違っているとは断言できなかった。
その後も、シリウスの事についてあれこれ議論したが、結局双方意見が並行性のまま、授業開始10分前のチャイムが鳴ってこの話しは打ち切りとなった。
ハリーは自分の名付け親についてケチをつけられたことに腹を立てていたが、クリスはハーマイオニーの言う事もハリーの言う事も両方分かるので、お茶を濁してこれ以上この話題で仲間割れが出来ないようにした。
今日の最初の授業は『呪文学』だった。皆が黙らせ呪文を練習している中、クリスは1人羽を前に浮遊呪文を練習していた。
確かこの呪文で1年生の頃トロールと戦ったのだ。懐かしい、と言えば懐かしいが、他の皆は魔法がどんどん上達している中、自分だけこんな初歩の初歩を反復しているが、だんだん馬鹿らしくなってきた。
幸い、この授業ではカエルやカラスを黙らせる為に野放しにしているので、あっちの机からゲロゲロ、こっちに机からカーカー騒がしい鳴き声が絶えないし、誰が何をやっているのか誰も気にしない。
それを良いことに、クリスは机に肘をついて考えているふりをしながら惰眠を貪った。
終業のチャイムが鳴ると、クリスはぼんやり目を覚まし、次の教室までフラフラ歩いて行った。そしてそこでも、クリスは殆んどを寝て過ごした。
しかし、前よりも気分は沈んではいなかった。きっと昨夜のシリウスの言葉のお陰だろう。例え嘘でも、自分の居場所があるという事がこんなに幸福なことだとは思ってもいなかった。