第20章 【醜い手】
ヴォルデモートと言う言葉を聞いて、ロンがぎくりと身じろぎした。それとは反対に、ハリーはますます事の重要性を再確認したようだった。
その一方で、クリスは魔法が使えなくなった事を、まだシリウスに相談していなかったことを思い出した。
ヴォルデモートが復活したというのに、魔法が使えなくなって役立たずになった自分はいったいどうすれば良いのかシリウスの意見を聞いてみたかった。
「シリウス、聞いているかもしれないが……私の魔力が――」
「ああ、その事か。大丈夫、ダンブルドアも言っていたと思うが魔力を失ったのは一時的なものだ。心配しなくてもすぐに元通りになる」
「もし……もし魔力が戻らなかったら?」
「その時はその時だ。心配しなくても大丈夫、君さえ良かったら私の屋敷で暮らせば良い。君1人くらいいつでも守ってみせる」
シリウスのその言葉に、クリスは例えようのないくらい心を揺さぶられた。心のどこかで、魔法が使えなくなった自分はもうどこにも居場所がないように感じていたから、例え話し半分だとしても嬉しかった。
シリウスが微笑むと、自然とクリスも笑顔になった。が、次の瞬間、シリウスが横を向き驚いたように顔を硬直させた。
「どうした、シリウス?」
しかしクリスの言葉に返事をする事もなく、一瞬のうちにシリウスの顔が暖炉の炎の中から消えた。代わりに、醜く太った手が現れ、今までシリウスがいた辺りを掴もうと指を必死に動かしている。
突然の事に、クリス達は驚いて後ずさりしながら暖炉から離れた。
「アンブリッジだ……この手、間違いない」
暖炉から十分離れてた所で、ハリーが小さく呟いた。そう言われてみれば確かにこの醜い手は見覚えがある。