第20章 【醜い手】
「当番って、なんの?」
「ああ、気にするな。騎士団のなにかだ」
シリウスはさり気無く流したが、クリスはそれが逆に気になった。
こう言っては何だが、あのウィーズリーおばさんが快く思っていないシリウスに対して重要な伝言を頼むほどの騎士団の仕事とは何なんだろう。
シリウスに再度尋ねたい気持ちもあったが、きっと聞いても答えてくれないと思い、この場はやめておいた。
「ちゃんと私が伝言をしたとモリ―に伝えてくれよ。どうもモリ―からは信用されていないみたいだからな」
「つまり、シリウスも僕達に二度と会合をするなって言いたいの?」
「私が?まさか!!悪いが私はモリーとは逆に、とても良いアイディアだと思っている!」
それまで悪戯っ子の様にニヤニヤ笑っていたシリウスの顔が、パアーっと明るいイキイキした顔になった。どのくらいイキイキしているかと言うと、青白い顔が赤く高揚し、まるでシリウスの顔に『出来る事なら自分も加わりたい』と書いてあるのが見える程だった。
「きっとジェームズ――ハリーのお父さんが生きていたら、全く同じことをしたと思う」
「僕のお父さんが?」
「ああ!君のお父さんや私が、あのアンブリッジとか言うババアの言いなりになっているはずがないからな」
その言葉を聞いて、ハリーは目を輝かせた。自分達のやろうとしている事が間違っていないと、誰か大人に背中を押されたのはこれが初めての事だったからだ。それが自分の名付け親なら尚更だ。
しかしそれとは反対にハーマイオニーは顔を曇らせた。
「でも、もし私達が退学になってしまったら?」
「おいおい、全ての始まりはハーマイオニー、君が発端だったんだろう?自分の発言に自信を持ったらどうだ?」
「自信がない訳じゃないわ。でも……」
「時には学校より、もっと大切にしなければならないなものがある。今がその時だ。ヴォルデモートが復活した今、自衛手段を学ぶ事は何よりも大切だ」