第20章 【醜い手】
「会合の場所はもっと選んだほうが良い。よりによって『ホッグズ・ヘッド』とはいただけない」
「どうしてその事を知っているの?」
「あそこは人が少ないし、盗み聞きするのにはもってこいだ。それに顔を隠していたって誰も気にしない」
「でも『三本の箒』はほかの生徒でいっぱいだったから……」
「木を隠すには森の中、という言葉がある。ハーマイオニーはもっとお勉強が必要みたいだ」
クックック、とまるでシリウス自身がその場を盗み聞きしていたように笑った。しかしダンブルドアの言いつけでシリウスはグリモールド・プレイスの屋敷から出られないはずだ。
だがシリウスの性格を考えると、その可能性もなくはない。クリスは恐る恐る尋ねた。
「シリウス……まさかとは思うがホグズミードに――」
「いや、私じゃない。私が行きたかったが止められた。行ったのはマンダンガスだ」
「でも、あの場にはいなかったわ」
「変装していたのさ、ハリーとクリスを護衛するためにな。まさかそのままの姿ってわけにはいかないだろう?」
折角羽を伸ばせるホグズミード行きの休日にまで、護衛と言う名の監視が付いていた事にクリスもハリーも正直良い気持ちはしなかったが、シリウスはクリス達の企みがことさら面白い出来事のだったかの様に、始終笑っていた。
「そうそう、言い忘れてはいけない事があったんだ。ロン、君のお母さんから言伝を預かっている。『何を考えているのか知りませんが、どんな事があっても違法な組織には加わらない事。万が一退学処分になんてなったら折角監督生に選ばれた意味がありません。魔法を学びたいのであればもっと大人になってからにしなさい』という事だ」
「うえぇ、ママってどうして人のやる気を削ぐ天才なんだろ」
ロンが苦虫を噛み潰したような顔をした。それからシリウスはハリー、クリス、ハーマイオニーの方に顔を向けた。
「他の3人にもあるぞ。『計画を今すぐ中断するように、今ならまだ間に合います』だ。尤も、保護者でない以上3人には強制できないことはちゃんと認めている。ただ、自分が3人の将来を考えて冷静に判断した結果だと強く言っていた。本当なら手紙でも送りたかったんだが、途中でフクロウ便が捕まる恐れもあるし、今夜は自分が当番なので仕方なく私に言伝を頼んだみたいだ」