第20章 【醜い手】
「あのさぁ、フレッドもジョージも『O・W・L』で3科目しか合格しなかったけど、どうしてかな?」
「それは彼方のお兄さん達がおバカだから」
「本当にバカだったら、あんなもの開発出来ないと思うんだけど……」
フレッドがオレンジ色のグミを口に入れると、用意してあったバケツにゲーゲー吐いた。そして今度は紫色のグミを食べると、途端に嘔吐が止まってニッコリ笑った。
バケツに吐き出したゲロは、リーが魔法でキレイに消している。ジョージはその弁才を生かして、商品の説明と値段を声高にアピールし、談話室にいるほとんどの生徒が、それを見て次々に注文書に名前を書いていた。
確かに、本当にバカにあんな真似は出来ないかもしれない。『ずる休みスナックボックス』はたちまち大繁盛となり、夜遅くまで生徒がたえなかった。
もうすぐシリウスとの約束の時間だという頃になって、やっと生徒全員がいなくなった。
ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの4人はチラチラと暖炉に目をやった。
正直もう気分は宿題どころではない。シリウスがいつ現れるのかと、3分に1度は暖炉に目をやっていると、夜中の1時を過ぎた当たりだろうか、暖炉の炎が一瞬大きく揺れたかとおもうと、その中にシリウスの顔が浮かんだ。
「シリウス!」
「やあ、みんな元気そうだな」
4人は急いで暖炉のそばに座った。なんの邪魔も入らずシリウスと会えたことに、クリスはひとまずほっとした。
外に出られないシリウスの顔は青白く、また前よりも少し痩せたように見えた。だがシリウスはそんな事は全く気にしていない風にニッと笑って見せた。
「調子はどうだい?」
「万事首尾よく、とはいってないかな。まず、魔法省が強引に法律を作って、僕たちのクィディッチチームを解散させて――」
「そしてその腹いせに、極秘の『闇の魔術に対する防衛術』のグループを作った、かい?」
どうしてシリウスが知らないはずの情報を知っているのか、みんな目が点になった。それを見て、シリウスはますます笑顔になった。