第20章 【醜い手】
やがてチャイムが鳴り、陰湿な『占い学』の教室を出ると同時に、クリスは耐えていた腹筋を解放した。
「あーっはっはっは!!ついにやったなあの先公!アンブリッジ対トレローニーか。どちらが負けても面白いなんて中々ないぞ!!」
「クリス、笑いすぎ」
「でも気分いいよな。これで上手くいったらトレローニーは停職だぜ?」
「あら?トレローニー先生がどうかしたの?」
クリスが廊下を歩きながら大声で笑っていると、合流したハーマイオニーが不思議そうに訊ねてきた。
ハーマイオニーに事の顛末を説明すると、すました顔で「まあいつかはこうなると思っていたけれどね」と言った。
「でも、そうなると代わりの『占い学』の先生はどうなるのかしら?」
「知らん。でもあのインチキばあさんより悪い先生なんて来ないだろ?」
「いや、下には下がいるもんだぜ?」
そう言いながら、ロンが次の授業である『闇の魔術に対する防衛術』の教室を指さした。
中に入ると、もうアンブリッジは教卓に座り、いつものガマガエルそっくりな顔でニヤーっと笑って生徒を待っていた。全員が席に着くと、アンブリッジは少女のような甲高い声であいさつをした。
「みなさん、こんにちは」
「こんにちは、アンブリッジ先生」
クリスを抜かした生徒達がうんざりした顔で返事をした。
確かにロンの言う通り、下には下がいるかもしれない。もしトレローニーが停職になって、ダンブルドアが代わりの先生を用意できなかったら、省令通り魔法省が新しい先生を連れてくることになる。そうなったら、トレローニーどころの騒ぎじゃない。
「それじゃあ皆さん、杖はしまってね。今日は『防衛術の理論』の34ページを開いてちょうだい」
クリスは一応言われた通り教科書を開いたが、授業が終わるまで一切教科書を読まずに思案にふけっていた。